累計260万部を突破した阿部智里さんによる大人気和風ファンタジー「八咫烏シリーズ」。

 シリーズ完結を前に、シリーズ第1作『烏に単は似合わない』、第2作『烏は主を選ばない』を合本にした特製BOX入り愛蔵版が発売されることに! 現在、紀伊國屋書店グループにて予約受付中(6月30日まで)です。この『八咫烏シリーズ 愛蔵版』について、装画を手掛けた名司生さんにお話を伺いました。著者の阿部智里さんからのオーダーの中身とは? 名司生さんが好きなキャラクターは? 制作秘話をたっぷり公開します。

 ※『楽園の烏』から始まる「八咫烏シリーズ」第二部の内容に触れる部分があります。未読の方はご注意ください。

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──『八咫烏シリーズ』の第1巻『烏に単は似合わない』、第2巻『烏は主を選ばない』をまとめた愛蔵版が出るというお話を聞かれたときは、どう思われましたか。

名司生 まず、とてもうれしかったですね。やっぱり『単』と『主』はワンセットじゃないですか。同じ時間軸の別視点の物語ですから、より深くこの世界を知るためには一緒に読んでほしいなという思いが私としてもありました。『単』と『主』には別の魅力があって、さらに『主』のほうが今後の展開へのつながりが強いです。『単』だけ読んで「面白かった!」と終わるのではちょっともったいない。この2作が1冊になることで、シリーズ未読の方に薦めやすくなりそうです。箱入りという仕様もなかなか書店で見かけない分、特別感が増しますよね。

「阿部先生の鋭く刺す角度がすごいなと」

──装画のアイデアについて伺います。表1(表紙)を若い頃のあせびと雪哉、そして表4(裏表紙)をシリーズ終盤時点でのふたりにするというアイデアを聞かれたときはいかがでしたか。

名司生 あせびちゃんと雪哉が並ぶのは、それぞれ『単』『主』の主人公なのでよく分かりますが、裏表紙のほうは……すごいですよね。『単』『主』だけを読んだあとこれを見てもぐっとくるものがありますし、第二部まで読んでいるファンの方なら、もうなんとも言えないため息が出るんじゃないでしょうか。阿部先生のファンサービスというか、ファンの方を鋭く刺す角度がすごいな、と思いました。

特製BOXには名司生さんの書き下ろしイラストが。さらに本体は布張り箔押しの豪華仕様です。

──今回、雪哉が年を重ねた姿である「博陸侯・雪斎」のビジュアルが初公開となります。名司生さんは以前から年配の男性も描きたいとおっしゃっていましたが、実際に描かれてみていかがでしたか。

名司生 頭の中でぼんやりあるものを、いざ形にしようとしたときの難しさはありました。私は雪哉が大好きなんですが、第二部で雪斎になってから、より好きになった印象があります。ちょっと変な表現になりますが、「まっすぐひねくれた」という感じがあって、私のなかでは、正しい成長ラインに乗っているんです。

──作者の阿部さんからは、表情について細かい指定があったと伺っています。

名司生 ラフでふわっと描いていたものを、阿部先生からの指定で固めていった形です。阿部先生に「記念写真」というイメージがあったということなので、それを要求されたら雪斎はこういう表情になるよな、という納得感がありました。

──あせびについては、「大紫の御前」として描かれて、衣装も『単』の時代の十二単から大きく異なる高貴なものになりました。

名司生 これまで描いたことがなかったので、楽しさもありましたね。やっぱり自然と、平安時代の十二単よりも、こちらの衣装のほうが威厳が増しているように感じて、女傑感ある仕上がりになっていると思います。

──愛蔵版では、特典としてアクリルスタンドも制作されています。こちらのイラストについてはいかがでしたか。

名司生 こちらは澄尾を描くのが初めてでした。これまで表紙に出てきていないキャラクターを描くっていうのは、やっぱり緊張しますね。元々「少年のような」っていう感じでかわいらしさもありつつ、ただやっぱり格好いいところもあるので。性格を意識しながら描きました。

『主』時点での若宮(奈月彦)、雪哉、澄尾を描いたアクリルスタンド

文庫版『望月の烏』でもビジュアル初登場のキャラクターが

──続きまして、最新刊の『望月の烏』の装画についてお伺いします。こちらも新キャラクターの凪彦が描かれていますが、いかがでしたか。

 

名司生 これまでビジュアルが出てきていないキャラクターを描くっていうのは、やっぱり少し緊張しますね。ファンの方に初見で「誰だ?」と思われるのではなく、「ああ、あのキャラクターか」って納得していただきたいので。皆さんそれぞれ想像されている姿があるとは思うので、あんまりそこから離れたくないなっていうのもありつつ、私の思う凪彦を描かせていただきました。

──背景の植物にも意味が込められているそうですね。

名司生 そうですね。選択肢は桜か藤でした。あせびちゃん由来の桜なのか、宗家由来の藤なのかっていう。今回は桜になりました。

──左下のもみじは、隣の巻(『烏の緑羽』表紙)からつながってきています。

名司生 そう、凪彦の視線の先を追うと、長束を見ているという構成です。単品で見る絵とつなげて見る絵では、またちょっと印象が変わるといいなと思っています。

 

──最後に、今後『八咫烏シリーズ』で描いてみたいキャラクターはいますか。

名司生 勁草院のみんなですかね。ストーリーが進んで、これから表紙で描く機会はなさそうですが、「ありし日の人々」というイメージで描いてみたいです。

──シリーズもいよいよ終盤ですが、最後までよろしくお願いします。

名司生 はい。最後まで「八咫烏シリーズ」を描かせていただけたらと思います。引き続きよろしくお願いします。

INFORMATION

2026年6月6日(土)、18:00~ 「紀伊國屋書店新宿本店3階 アカデミックラウンジ」にて、名司生さんと文藝春秋デザイナー野中が『八咫烏シリーズ 愛蔵版』について語るイベントが開催決定! ※着席予約は満数になりました。立ち見でのご観覧は予約不要でご参加いただけます。

詳細はこちらから↓ 
https://store.kinokuniya.co.jp/event/1779012688/

 

なつき/兵庫県出身、東京在住。 墨や透明水彩を主な画材として制作を行う。小説の装画をはじめ、子ども向け教材、パッケージ、ポスター、塗り絵ブックなど、幅広い分野でイラストを手がける。2016年「ボローニャ国際絵本原画展」入選。20年より「八咫烏シリーズ」の装画を手がける。画集『名司生ART WORKS』(グラフィック社)など。