![傷心と喪失の](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/6/6/1500wm/img_66140259993f1866774770ec6a7f940114031.jpg)
「とき」が「くすり」になるとき
![](/mwimgs/5/7/1000wm/img_57646fa4184264e759e0394acb3c115e25365.jpg)
――本巻最後の作品となる「ときぐすり」は、1つの作品としても6つの物語を締めくくる物としても素晴らしく、非常に感動的なものだと思います。そもそも「ときぐすり」という言葉自体が、とても訴えるものがありますね。
畠中 「ときぐすり」は現代ものの小説を読んで知った言葉で、文字通り「時がたつのが薬になる」意味で遣われていました。いい言葉だなあと思って調べてみると、江戸時代に「時薬(じやく)」はあっても、「ときぐすり」という言葉はありませんでした。でも江戸時代にはもちろん「とき」「くすり」どちらもある。作中の滝助のように「時薬(ときぐすり)」と読んで「時がたつのが薬になる」意味で遣われる可能性はあるのではないかと思って、この言葉を題名にしました。
――本作では北国から流れてきた少年・滝助、麻疹で跡取り息子を亡くした袋物師の数吉、糊売りの老婆・むめ婆の不思議な結びつきが描かれます。3人が出会って時が過ぎる中、少しずつお互いがお互いを気に掛ける関係が作られてゆく。その過程が、とても感動的でした。
畠中 滝助・数吉・むめ婆、みんなひとりでしたからね。このままいけば、むめ婆を看取るのは、もしかしたら滝助と数吉のふたりかもしれません。
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