「その後」を生きる物語
――本作には滝助の来歴をめぐるサスペンスも仕掛けられていて、最後までハラハラさせられました。そしてラストシーンで、麻之助が滝助、数吉、むめ婆の「今まで一人だった三人」を見て、今度は自分にとって何が「ときぐすり」であったのか考えます……妻と娘を失った悲しみからの立ち直りをようやく自覚した麻之助の姿が、本当に感動的でした。
畠中 周囲に人間が「いてくれた」ことを意識できるのは、悲しみからすこし離別することですね。「ときぐすり」の麻之助は、泣き暮らしていた時期とは違う人間になっているのではないでしょうか。
このシリーズは時間を動かすことだけを最初に決めて書き始めたものでしたが、こういう展開になるとは正直自分でも思っていませんでした。物語の中の時間はこれからも進めてゆくつもりですが、麻之助はこれからどうするのか、清十郎の縁談はどうなるのか、吉五郎と義理の父の微妙な関係はどうなるのか、おこ乃ちゃんはどうなるのか、そして彼らは本当に成長するのかどうか、見守って頂けましたら幸いです。このシリーズは、自分の居場所や、自分のやってゆくことも探す物語なのだと思います。読者の方も、物語に触れながら、いつもの生活の中で、気に掛ける人を探したり、暮らしていくことの意味を考えて下さったら嬉しいですね。
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