『トヨタ・ストラテジー――危機の経営』の著者、佐藤正明さんとは30年来の友人であり、この新著は昨年、英語版が先に米国で出版され、米国の友達から「GEのCEO(最高経営責任者)であるイメルト氏も推薦する良書だ」との話を聞いていた。佐藤さんとの交友関係は、私が当時の通産省で日米自動車交渉の「実質責任者」として多忙を極めていた時に始まり、常にトヨタの内情を教えて頂いたことは私の仕事の上でも大変有意義であり、感謝している。
1981年の168万台、続く84年の185万台の対米輸出規制を担当した時に、米国から対米直接投資を強く求められた。ホンダは直ちに投資を決めたのに対し、トヨタは2年間の検討期間を求め、その間に複数の調査機関に投資のリスク調査を依頼した。結論はUAW(全米自動車労組)の支配しない州への進出であった。トヨタの「慎重さ」と「従業員との関係」重視の組織運営に大変興味を持った。
当時、トヨタは既に日本一の自動車企業であった。しかし、1961年頃はどちらかというと日産がやや優位に立っていた。当時私は、3年間に亘り特定産業振興臨時措置法案(いわゆる「特振法案」)の国会提出に「佐橋軍団七人の侍」の一人として参画していたが、その再編対象産業の一つは自動車産業であった。その時に、日産とトヨタで「ストラテジー」や「労使関係」に大きな違いを感じた。
その後、佐藤さんに「なぜトヨタを追い続けるの」と聞いたところ、「記者として、産業動向を見極めるには、トップ企業を丹念に追い続けることだ」、「企業は人間の集団であるので、経営首脳のリーダーシップと組織文化を追い続けることが、企業の将来を見極めることになる」との説明を受けた。「なるほど」と感心し、機会があれば同じ目でトヨタを見続けた。お付合い頂いた、豊田英二さん、豊田章一郎さん、奥田 碩(ひろし)さんをはじめとする多くの方々のそれぞれの特徴と戦略を学ぶことができた。
その後、組織文化について、私が8年半社外取締役を務めたデュポンとの比較で改めて興味を持った。デュポンは生誕207年の歴史を持つが、100年ごとに戦略の大転換を実行してきている。まず、初めは火薬会社であり、第一次世界大戦で対峙した両軍に火薬を売ることで大利益をあげた。
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