2016.09.26 書評

創刊50年のそば雑誌編集長が語る、そばの本当の魅力とは?

文: 種村 桂介 (季刊新そば 編集長(日本ペンクラブ会員))

『そばと私』 (季刊「新そば」 編)

『そばと私』 (季刊「新そば」 編)

 二十センチ四方の「季刊新そば」が創刊したのは一九六〇(昭和35)年。関西で俳句の同人誌に携わっていた中野沙代子さんがそばに魅せられ、大阪で「蕎麦新社」を興して出版した。

 中野さんは新幹線も高速道路もない昭和三十年代の日本を行脚し、そばの味と主人や女将の人柄も確かめて季刊誌の賛同店を募った。「かんだやぶそば」三代目故堀田康一さんの支援もあり、結成したのが「全国新そば会」。いまでは北海道から沖縄まで百軒近くの老舗、名店が集う会となった。

 私が二代目編集長に就いたのは七七年、四十号からである。四十号の準備中に中野さんが急逝し四年間休刊。当時名古屋でグルメ誌を手がけていた私に、新そば会名古屋会員である「し奈乃庵」、「えびすや本店」の当主から声が掛かったのだ。

 創刊当初から中野さんとともに、新そば誌の発行と新そば会の発展に尽力してきた大阪「しのぶ庵」大橋鍈二さんをはじめ、東京「神田まつや」、日本橋「やぶ久」へ挨拶に出向き、推挙を得て編集長となった。

 新そば誌の魅力は、新そば会会員店の自慢の味、店の紹介等のほか、毎号寄せられるそばにまつわる数々のエッセイである。「おそば好きならぜひ一筆」と執筆依頼の手紙を出すと、各地各界から味わい深いエッセイが編集室へ届く。そばがいかに愛される食べものであるかを、そのたびごとに思い知らされてきた。

 この季刊誌に携わり四十年。そば好きの愛読者、そして、全国で今日もこころ込めてそばを打ち供する熱意あるそば店の当主に支えられ、重ねた号は百五十を超える。

 これまで掲載してきたエッセイから、ここに珠玉の“そば讃歌”を集めた。

 ひかえめで可憐な花の後につく小さな実から、丹精こめたそばが打たれる。そばはじつに素朴な食べものであるが、我々に与えてくれる感動はそれゆえに深い。

 この一冊を、そば好きのどうぞおそばに。

(「まえがき」より)

そばと私
季刊「新そば」・編

定価:本体650円+税 発売日:2016年09月02日

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