2016.02.17 インタビュー・対談

胃袋は思い出で出来ている!――西加奈子×竹花いち子

『ごはんぐるり』 (西加奈子 著)

胃袋は思い出で出来ている!――西加奈子×竹花いち子

食べ物の話をしだしたら止まらない? 西さんが「とても素敵な方で、お料理も大好き」と絶賛する料理人・竹花いち子さんの自宅を訪問。「ごはん」をこよなく愛する二人が、料理を作ること・食べることについて語り合いました。

『ごはんぐるり』 (西加奈子 著)

西 こんにちは~。お久しぶりです!

竹花 ほんと、久しぶり。春に直木賞受賞のお祝い会を、ここでしたとき以来?

西 お互いに忙しくて、なかなか会えないからね。いち子さんのお店には行ったことないけど、個展のオープニングでケータリングをお願いしたことがあって。どの料理もすごく美味(おい)しくて、可愛かった。それからのお付き合いだね。

竹花 今日は加奈子さんのために1品作って食べてもらう、っていうことで、この『ごはんぐるり』を読んでいたら、すぐにメニューが決まったの。お粥みたいにぶよぶよしたものが好きだっていうから、きっと気に入ってもらえるかと思って。

(キッチンに立ち、鍋をふること7分。あっという間に1品完成)

竹花 おまたせしました、「東京チャーハン」です。お店やってたときのレギュラーメニューだったの。

西 うわー! 美味しそう。もう匂いがたまらん。

(手早く人数分に取り分ける西さん)

竹花 あ、私は食べなくていいから。

西 え? 一緒に食べよ。なんて、私が作ったみたいだけど(笑)。

竹花 ははは。じゃあちょっとだけ。

西 いち子さんのお料理って、いつもそうなの。自分が作ったんじゃないのに、みんな「ほら食べて食べてー」って(笑)。

竹花 じゃあ、あたたかいうちに……。

一同 いただきまーす!(しばし無言) 美味しい~!!

西 めっちゃ美味しい。これ最高や! 出汁(だし)が入っているのに、全然ベチャベチャしてない。

竹花いち子(たけはないちこ)さん/神奈川県生まれ。美大卒業後、コピーライター・作詞家を経て、世田谷区代沢に「東京料理タケハーナ』をオープン。独創的なメニューと気きくな人柄で多くのお客さんに愛されるが、2011年、惜しまれつつ閉店。現在はフリーの料理人として活動中。
HP〈お料理ちゃん〉http://takehanaichiko.com/

竹花 ご飯をせっかくパラパラに炒めたのに、ジャッと出汁を入れちゃうのね。面白いでしょ。子供のころラーメン屋さんで、チャーハンを一匙(ひとさじ)食べるたびに、少しずつスープをかけて食べるのが好きだったのね。それがこのチャーハンの原点かも。豆腐が入っているから消化もいいし、加奈子さん忙しくて疲れていそうだから、いいかなーと思って。

西 うんうん(ほおばりながら)、うれしい。

竹花 たらこ、紅生姜にピーマンとかが入っているけど、組み合わせはその時の思いつき。私の料理はすべてそうなっているというか……。

西 フルーツと肉を組み合わせるのとか、今わりとみんな普通にやるけれど、最初に始めたパイオニアは、いち子さんだって聞いたよ。

竹花 どうだろうね。自分に自由にやらせてみたら、こうなっただけなんだけど。

西 小さいころからそうだったん? チャーハンにスープ入れるとか、自分で味作っちゃうとか。 

竹花 そうかも。小学校3年生の頃から、料理の本にはまって、写真をずっと眺めてた。「学習」と「科学」という雑誌を定期購読していたんだけど、「タンポポの根っこのコーヒー」という記事をみて、自分で根っこをたくさん採ってきて煎(せん)じて飲んだら、すごく不味(まず)くて(笑)。あといんげんの種をシャーレで発芽させる付録がついてきて。発芽させて、植え替えて生(な)ったいんげんをお味噌汁に入れたら、ものすごく美味しかった、とかよく覚えてる。

 自分にとって料理は、子供の泥んこ遊びみたいなものかなって、この頃思うんです。とにかく思い付いちゃったことは、大変でも忠実にやってみるようにしてる。

西加奈子さん

西 前、いち子さんが肉を料理してくれたとき、「豚ではやったことあるけど、牛は初めてなのー」って。完全に決められたものじゃない、というのがすごくワクワクして、また出来た料理がめちゃくちゃ美味しくて(笑)。なんかうれしかった。

竹花 お料理教室ですら、ぶっつけ本番だったりするから(笑)。初めて作ると自分も興奮してワクワクするから、それがみんなにも伝わるのかな。頭のなかに完成形はあるけど、作りながら考えて、ゴールに向かっていく感じ。実験をしているわけじゃなくて、自分のなかでは当たり前なことをしているだけなんだけど。

西 お蕎麦(そば)におっきなミカンが入ってたことがあったでしょ。あれも驚いた。

竹花 柑橘(かんきつ)系が旬の時期だったし、これは合うって思ったんだよね。そういう直感はあまり外さないみたい。

西 いち子さんは絶対音感、みたいな絶対味覚があるんやね、きっと。

竹花 自分の家の冷蔵庫の隅々まで、何が入っているか思い出したいときに思い出せる、というのはちょっと自慢できるのかな。作りながら、そうだあれ入れようとか、絶対合うはずとか。あ、お漬物もどうぞ。

西 これも美味しい~。色も真っ赤で綺麗だし、可愛い。何の漬物?

竹花 紅芯(こうしん)大根。蕪(かぶ)みたいに丸くて、外側は白いのに果肉が赤い。切って塩してバルサミコビアンコに一晩漬けたの。お酢が入ると赤色がパーッと濃くなって綺麗だから、お節(せち)に入れたりね。

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ごはんぐるり
西加奈子・著

定価:本体560円+税 発売日:2016年02月10日

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