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藤井聡×中野剛志 国難の時代だからこそ真の議論を!

藤井聡×中野剛志 国難の時代だからこそ真の議論を!

『日本破滅論』 (藤井聡・中野剛志 著)


ジャンル : #政治・経済・ビジネス

 

藤井 政治の目的は本来、柳田国男の言葉でいえば「経世済民」です。庶民を救うことです。ところが、政治家だけでなく、学者も官僚も財界人も、その肝心の「志」を忘れている。
 日本経済の喫緊の課題はデフレからの脱却です。デフレのせいで毎年、どれほどの自殺者が出ていることか。なのに、政治家もエコノミストもデフレを加速させる新自由主義のイデオロギーに固着して、「政府を小さくせよ」との意見を頑なに変えようとしない。

中野 「内需はもう拡大しない。だから、成長するアジアの外需を取り込め」と言ってTPP参加を急ぐのも同じ事情です。
 ここに欠けているのは、どんな「物語」を共有するかについての議論なんです。冷戦後の日本は、「高度成長」に代わる国民統合の物語を紡ぐことができなかった。その証拠が「失われた20年」という言葉なんですね。

藤井 実は、どんなに客観的に見える事象でも、採用される物語によって大きく意味が変わってくる。あの小惑星探査機の「はやぶさ」も、緊縮財政の物語によって仕分けられていても不思議でなかった。でも国民はその成功を喜んだ。潜在的にせよ、ナショナルな物語が共有されていたからです。

中野 結局、グローバル化の影響が大きいんです。主流派経済学のテキストに典型を見るように、グローバル化とはマニュアル化であり、「マクドナルド化」です。ビッグマックは世界中どこに行っても同じ味、同じ大きさですよね。
 本書では、マクドナルド化された経済学を、マクロ経済学ならぬ「マクド経済学」と呼んでいます(笑)。

藤井 マクド化をやめて、この国が本当に豊かになるかどうか、国民が幸せになるかどうか、プラグマティックに議論しなければならないんです。

中野 本書でもこだわりましたが、いまだ震災復興は進んでいない。この国は、復興よりも財源の話を優先したんです。そのくせ、「被災者がかわいそう」ときれいごとを言う。本音と建て前の下手な使い分けはやめてほしいですね。

藤井 来るべき大震災に迫り来る大恐慌。日本は今、破滅の危機を迎えつつある。といって陰鬱に沈む必要はない。破滅に立ち向かえばこそ活力が湧いてくるからです。現に、状況が絶望的であればあるほど、中野さんも僕もかえって快活に振る舞っていた。

中野 藤井先生との議論は、どんな深刻な話題でも、真剣さの中に笑いが絶えない。お互い、精神の硬直を嫌っているからです。本書を通じて、そんなわれわれの自由闊達な議論の一端に触れていただければ幸いです。

(構成 毛利千香志)

日本破滅論
藤井 聡
・著 中野剛志・著

定価:809円(税込) 発売日:2012年08月20日

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