――正直いって、自由奔放に生きてきたイメージの堀江さんが、よく我慢できたなと思ってしまいますが。
堀江 懲罰ゼロでした! 我ながらよくやったと思います。「刑務所で人間観が変わった?」とよく訊かれるけど、なんにも変わってないですよ。誤解されがちですが、僕はもともと傍若無人な人間じゃないんで、対人関係やルールを遵守するスキルはあるんです! 追い込まれればできます(笑)。
ただ、刑務所の懲罰って、なにも反抗する気がなくても、日常のささいなルールに罠がある。大王製紙前会長の井川意高さんなんて収監されてすぐ懲罰だそうですよ、タオルの不正洗浄で。決められた日以外は居室のタオルを洗っちゃいけないんです。そんなことで、と驚くでしょ? でも懲罰を喰らうと、階級が上がるのが遅れる、すると面会や手紙を書く回数の制限がキツイわけです。
――『刑務所わず。』ではそんな事情が赤裸々に書かれています。実は臭いメシではない「刑務所グルメ」から、下半身ネタまで……。エロ本の差し入れOKとは驚きました。
堀江 あまり深刻ぶらず、明るく伝えたかったんです。『なう。』シリーズに続き、西アズナブルさんの実録マンガもあって面白く読めると思うので、自分には関係ない世界と思っている普通の人たちにこそ気軽に手にとってほしい。
というのは、僕が刑務所で会った人の9割以上は、ごく普通の人ばかりだったから。育った環境に恵まれなかったり、社会にルサンチマンがあっても、話してみると普通の人なんです。そして、必ず社会に戻ってくる。でも刑務所から出た人の再犯率は五割以上です。ましてや私が世話をしていた受刑者たちの社会復帰のハードルはもっと高いと思う。だから、更生して出てきた人になるべく偏見の目をもたない、というかたちで支援してほしい。そのほうが社会の側にも絶対に得なんです。彼らを排除すると再犯というブーメランとして返ってきて、新たな被害者を生みかねないですから。
それに、誰だって刑務所に入らないとは言い切れないはず。圧倒的当選を果たした猪瀬都知事だって一寸先は闇でしょう? 特定秘密保護法とか、共謀罪の創設とか、厳罰化の流れは進みそうだし。明日は我が身、かもしれないですよ。
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