- 2010.02.20
- 書評
日本のツイッターノミクス
文:津田 大介 (メディア・ジャーナリスト)
『ツイッターノミクス』 (タラ・ハント 著/村井章子 訳/津田大介 解説)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
日本でもツイッターの利用者がついに300万人を超えた。ビジネス雑誌や週刊誌が大特集を始め、書店をのぞいてみても、ツイッター関連本のコーナーが設けられるようになった。
そうした中で出版されるこの本『ツイッターノミクス TwitterNomics』は、凡百の「ツイッターをどう使えばいいか」といったマニュアル本とは、まったく違った大きな価値を日本の読者に運んでくれる本だ。
なぜならば、この本はツイッターそのものではなく、ツイッターに代表されるようなウェブ2.0によって花開いた様々なツール―─ブログやSNS、ウィキ、ポッドキャスト、ソーシャル・ブックマーク―─などによって、僕たちの住む世界のルールがどう変わったかを、その先進国アメリカの事例をもとに、わかりやすく書いた解説書だからだ。単なる評論家的な解説にとどまらず、長年、オンラインの経験をオフラインの人間関係や自らのキャリアに活かすことを身をもって実践してきた著者のノウハウがたっぷりと詰め込まれているのもポイント。今後、個人や企業がオンラインで活動する際の貴重な「バイブル」になることは疑いがない。
本書の全体を通して流れるテーマは基本的にたった一つだ。それは「デジタル技術とソーシャル・メディアが発達したことで、我々の社会に従来型の市場経済(マーケット・キャピタル)とは異なる指標を持つギフト経済(ソーシャル・キャピタル)が誕生し、両者が猛烈な速度で収斂(しゅうれん)しようとしている中、個人や企業は後者といかに向き合い、活かしていくべきか」ということである。
その際に著者のタラ・ハントが核となる概念として用いているのが「ウッフィー」だ。
『マジック・キングダムで落ちぶれて』という小説のなかにある仮想の通貨。それは、他人に対して善行をおこなうことで蓄積されていく。そしてその世界では、すべての決済は「ウッフィー」でおこなわれる。
著者のタラ・ハントは、ウッフィーがどのような価値を持つか、第1章で端的に表現している。
<やっぱりお金は必要だ。二ドルなければミルクも買えない。ただ、オンライン・コミュニティでは二ドルに同じ価値がないことは覚えておいてほしい>(本書15ページ)
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