- 2010.02.20
- 書評
日本のツイッターノミクス
文:津田 大介 (メディア・ジャーナリスト)
『ツイッターノミクス』 (タラ・ハント 著/村井章子 訳/津田大介 解説)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
従来の市場経済の重要性は認めつつ、オンラインの世界にはいわゆる市場経済とは違う経済があり、それがリアルの世界を動かす影響力を持ちつつあるということを本書では指摘しているのだ。
<何よりも肝に銘じるべきは、オンラインに行くのは「つながる」ためだということ。人と人のつながりができ、交流が深まってくれば、やがて信頼関係が生まれる、そしてこれこそが、ウッフィーの基盤になるのである>(本書54ページ)
つまり、一見何の得にもならない行為が、結果的にビジネスやキャリアにめぐりめぐってプラスに働き、最終的にはお金につながっていくということだ。このフレーズだけ抜き出すと、出来の悪い自己啓発書の一節に見えなくもないが、本書をここまで読んできた人であれば、オンラインの世界では「オープンであること」と「見ず知らずの他人と対話・コラボレーションすること」が最重要視され、それらが新たな価値を生み出し、個人や企業の評価に直結しつつあることが実感として理解できるはずだ。
実のところ、僕もウッフィーによって多くの恩恵を受けている人間だ。1997年に出版業界の片隅で実用系のIT・パソコンライターの仕事を始めた僕は2001年頃に大きな転機を迎えた。原稿を書いていた雑誌が軒並み廃刊になっていったのである。インターネット・パソコン雑誌ブームが去って仕事が激減した僕は自分の「名前」を売り、仕事を取ってくる必要性を認識した。
そこで02年1月、ネットの世界にブログブームが到来する2年前に、ブログの原型とも言えるようなツールを自分でセットアップし、デジタル音楽と音楽産業に関する分析を専門的に書くブログをオープンした。それまで原稿料をもらって依頼された仕事をこなしていた実用ライターの僕にとって、無料でも「自分なりの見解」を好きなようにネットに毎日書けるという行為には新鮮な驚きがあったのだ。
当時は、その後一大ブームを起こすことになるアップルのiPodの初代モデルが発売されたばかり。デジタル音楽についてまとまった情報を集めるようなサイトは日本にはほとんどなかったため、程なく僕のブログは話題を集め、アクセス数も増えていった。ブログ更新にのめり込むようになった僕は、時間やコストをかけてブログのコンテンツを充実させるようになっていく。ライターとしての収入は激減していったが、名前を売るという目的は徐々に果たされ、ブログを見た編集者から僕の書いている専門分野に関する原稿の依頼が来たり、メディアや一般企業から講演の依頼が舞い込むようになった。
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