- 2009.06.20
- 書評
クリスティアーノ・ロナウド
ポルトガル航海者たちの末裔
文:竹澤 哲 (ノンフィクションライター)
『クリスティアーノ・ロナウド ポルトガルが生んだフェノメノ』 (竹澤哲 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
母が明かした新事実
本書を書き進めていく中、どうしても心に引っかかるものがありました。それは〇八年のマデイラ島取材でロナウドの母、マリア・ドローレスに会うことができなかったことです。本書を完結させるためにはどうしてもマリアの話は不可欠であるという気持ちは日を追うごとに強くなっていきました。
〇九年三月、私は思いきって再びマデイラ島へ飛び彼女を訪ねることにしました。そして彼女に会い、大きな幸運を手にしたような気持ちになったのです。なぜなら彼女の口からは驚きの事実が語られたからです。それは私にとって全くの初耳であり、これまでどのロナウド本と言われるものにも書かれていなかったことでした。
なぜこのような事実をこれまで誰も書き留めて来なかったのでしょうか。私にはこの事実はとても大きなものであるように感じられたのです。事実をここで明かすことはできませんが、分かったことはロナウドは近年のポルトガルの大きな変化によって生み出されたものではなく、もっとはるか長い時間でもって捉(とら)えなければだめだということでした。つまりロナウドにはまちがいなく、世界をまたにかけた大航海時代のポルトガル人航海者の末裔(まつえい)たる印が押されていたのです。
今季、マンチェスター・ユナイテッドはプレミアリーグ三連覇を成し遂げながらも、チャンピオンズリーグ二連覇は決勝でバルセロナに敗れ、果たすことができませんでした。しかもその内容は完敗ともいえるものでした。
試合後ロナウドはピッチ上にしゃがみ込み、しばらく立ち上がることができませんでした。あのユーロ〇四で見せた強い気持ちが、再び彼の身体の中に湧いたかのようでした。 「ロナウドには悔しさや苦しさをバネに身を粉(こ)にして働いてきたマデイラ島魂がある」と語ったのは、ロナウドがマデイラ島で所属していたクラブの副会長です。ロナウドはまだ二十四歳、果たして彼は今世紀最高のフットボーラーになるのでしょうか。これからも新たなる挑戦をしていくはずです。
本書は微力ながらも、ポルトガルの社会的背景を探ることでロナウドの真の姿に迫ろうとしたものです。本書を通じて、今後の彼とポルトガルに大きな関心を抱いていただけたなら、私はとてもうれしく思います。
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