- 2013.10.01
- 書評
私を導いてくれたリーダーたち
文:佐々木 常夫 (佐々木常夫マネージメント・リサーチ代表)
『こんなリーダーになりたい 私が学んだ24人の生き方』(佐々木常夫 著)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
そういう意味では4度も受験に失敗した学校劣等生ともいえる土光敏夫などはその強い意志によって「一瞬一瞬にすべてを賭けるという生き方の迫力、それが八十年も積もり積もると極上の特別天然記念物でも見る思いがする」と城山三郎が表現するほどのリーダーに変貌していく。
まさに土光は自分の努力で自分を磨き上げた手作りのリーダーと言える。
私が高校生のころ夢中になって読んだ徳川家康もそれに近い。家康は人質となった苦難の幼年時代をすごす体験の中で人間を学び、世の中を学び、自分を律し、周りの人々の大切さを理解していった。
坂本龍馬には土光や家康のような悲壮さがない分、人に尊敬されると言うより人に愛される面白味のあるリーダーである。この龍馬もまた、人から学ぶ名人だった。少しでも高い評判のある人の噂を耳にするとすぐに跳んで行って、教えを請う。
私は学ぶ力のある人を「学力ある人」と言っているが、まさに龍馬のような「学ぶ力」のある人がリーダーとなっていく。
一方、この本の中にはリーダーとしての紹介ではなく「リーダーとはいかなる人か」ということを示した人物も、何人か紹介している。
キングスレイ・ウォード、ヴィクトール・E・フランクル、スティーブン・R・コヴィー、新渡戸稲造などである。
私が若いとき最も大きな影響を受けた本はウォードの『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』である。ここには経営とはどうあるべきか、人生いかに生きるべきかなどについて父親としての愛に溢れたアドバイスが満載されている。6歳で父を亡くした私は、父親とはこれほど優しく暖かいものかと感動した。
フランクルの『夜と霧』を読んだときの衝撃も凄かった。フランクルの経験した苦難は私たちがぶつかった不幸など取るに足らないように思えるほど、辛いものであった。「苦悩は人間の能力のひとつである」というフランクルの言葉は深く重く心の底に落ちていく。
『武士道』を著わした新渡戸稲造の「第一義はあること(to be)、なすこと(to do)は第二義」すなわち、「優れたリーダーは正しいことをする人」であり優れたマネージャとは「決められたことを正しく遂行する人」というリーダー論も秀逸であった。
この本で挙げたリーダーたちは、それぞれ実績をあげた優れものばかりではあるが、行間の端々から私が強調する高い向上心と無私の心が背後にあることを感じ取っていただければ幸いである。
私はこのリーダーの本を社会に出たばかりの若い人にも、仕事で悩んでいる人にも、自分に自信を持てない人にも、すべての人に読んでいただきたいと考えている。
意志や志さえあればどんな人にも道が開けるということがわかってもらえるからだ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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