デビュー作から三十冊目
――題材には毎回苦労されたんでしょうか?
葉室 「牡丹咲くころ」は「無双の花」を書いていたころ立花家史料館の植野かおりさんに資料を教えてもらいましたが、あとはなんとなく行き当たるというのでしょうか。前から知っていたこともありますし、資料を読むのが基本好きで、仕事でない時も資料を読んでいて、そろそろ書きはじめにゃいかんなと、ぼんやり考えていると浮かんでくるんです。そしてイメージが次第にはっきりしてくる感じでしょうか。タイトルは先に決まっていることもあれば、後から決まることも両方あります。「牡丹咲くころ」「ぎんぎんじょ」「くのないように」の3つは最初にタイトルが決まってました。
――この「山桜記」で30冊目ですね。
葉室 デビューが遅かったので、一里塚としてですかね、自分の目標にしてきました。特別な理由はないのですが、歴史、時代もののジャンルの中で、こういった品揃えがあります。ウインドウに並べて、注文を待つ葉室食堂ですね。
――ここ数年は年間6冊ペースだとか。
葉室 担当の編集さんには出しすぎだ、律儀に付き合う読者がどれだけいますか! なんていわれましたね。自分に残された時間を考えるととりあえず30という数があったわけです。
書き始めたころは男が主人公、というのが多かったんですが、だんだん女性の主人公率が不思議と高くなってきました。女の人のいろいろなバージョンを書いていくというのが最近の指向でしょうか。ステレオタイプに語られてきた女性のイメージを変えていきたい。というか、そんなはずはないだろうと。ちゃんと自分で考え、自立できた女性じゃないのか。もっとしなやかで、強(したた)かな存在でしょうか。
題材には特に制限はつけていないんです。古事記の時代から幕末明治まで、依頼があればどの時代も書きます。万葉の時代とか、奈良時代などは意外と女性の時代なんですね。女帝の時に大きく歴史が動いているんです。意外と歴史を動かしていたのは女性じゃないかと思います。
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