- 2016.09.14
- インタビュー・対談
僕がカラオケで歌った「ハロー・グッバイ」が、この“幻の傑作”を生んだ
「本の話」編集部
『わずか一しずくの血』 (連城三紀彦 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
――96年の11月に連載は完結しましたが、それが単行本にならなかったのはなぜでしょう?
石川 じつは翌97年4月に、社内でいろいろあって、私が経済出版部に異動してしまったのがおもな原因でして(笑)。後を引き継いだ出版部の編集者が、「いくら電話しても連絡が取れなくて」なんて言ってるうちに、忘れ去られて埋もれてしまったんですね。
――あの頃はお母様の介護が大変で、付き合いの長い編集者もなかなか連絡が取れない時期が続きましたし、そのうちご本人も体調を崩されて人と会うこともめっきり少なくなってしまって。
石川 僕としては、連載を担当した小説で唯一本になっていない作品で、ずっと気になっていたので、今回、文春さんから刊行されることになって肩の荷が下りた思いです。
――『わずか一しずくの血』は冒頭からとても濃密な官能描写が展開されますが、これは石川さんのリクエストですか?
石川 いや僕の方からお願いしたわけではないんですけど、当時の「週刊小説」にはヌードグラビアもありましたし、川上宗薫さんや宇能鴻一郎さん、富島健夫さん、泉大八さんといった官能作家の錚々たる大家の皆さんが連載しておりまして、恐らく連城さんはそういう雑誌の傾向に気を遣ってくださったのかと。
――文春の担当者が生前にこの作品の改稿について打合せした時は、「冒頭の官能描写がしつこいですね」と仰ったので、少し刈り込んであるそうです。それにしましても、独特のフェティッシュな官能描写がバラバラ殺人とも相通じるものがあって、連城さんにしか書けない異様な世界観が横溢しています。
石川 連城さんは女性に囲まれたご家庭で育ったからか、感性は完全に女性でしたね。当時、担当編集者は男性に限ると言われていて、恐らく女性の怖さや執念深いところなんかがわかっちゃうから嫌だったんでしょうね。
連載が終わったあとはゆっくりお目にかかる機会もあまりなくて、一度、名古屋の中日劇場で連城さん原作のお芝居がかかった時に向こうでお会いしましたが。早すぎる死がなんとも残念です。
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