- 2010.12.20
- 書評
大人の勉強はなぜ身につかないのか
文:齋藤 孝 (明治大学文学部教授)
『偉人たちのブレイクスルー勉強術――ドラッカーから村上春樹まで』 (齋藤孝 著)
ジャンル :
#趣味・実用
この本には、読者が自分に適した勉強術に出会うためのヒントを詰め込んでおきました。多様な分野の人物の勉強術や仕事術を取り上げて、分析・解説しています。
一例としてスティーヴン・キングのスタイルを紹介しましょう。小説家というのはクリエイティブな仕事ですから、たくさん書ける日もあれば、まるで書けない日もある、と普通の人は想像しがちです。
しかし、彼はこう述べています。 「私は十ページ、二千語を一日の目安としている。(中略)よほど差し迫った事情がない限り、二千語書くまでは仕事は切り上げない決まりである」(『スティーヴン・キング 小説作法』池央耿訳、アーティストハウス刊)
キングは毎日同じ時間に書斎に入り、ドアを閉め、外界を遮断して書く体勢をとる。電話にも出ず、カーテンを引き、集中する。目標達成までドアは開けないのです。
人とつい携帯電話でやりとりしてしまうというような人は結構多いのではないでしょうか。そういう人には、この「外界シャットアウト術」がオススメです。キングと同じように毎日一定の時間、ケータイを放しておく、パソコンのメールチェックをしないでおく、ということをしてみる。その時間に、クリエイティブな勉強、深い思考が必要な作業に自分の頭脳をどっぷりと浸す、という習慣をつくるのです。
ブレイクスルー勉強術とは、現代における「時間のクオリティ・コントロール」ということでもあります。質を一定に保つというよりは、時間ごとに質を見極めて、その管理方法を変えていく。「人とコミュニケーションする頭脳」と「一人で勉強する頭脳」というのは違うものだし、あるいは「コミュニケーションのなかで勉強すること」もあるし、「まったく勉強とは関係ないコミュニケーション」というのもある。それを選別していけば、読書の時間も含めて、一日二時間くらいの勉強時間は確保することができるものです。
社会人には仕事やそのストレス、家庭環境など、いろいろな条件がありますが、むしろそのほうが、勉強に対するアプローチを真剣に工夫するようになります。その工夫自体に面白味を見いだすようになれば、もうこっちのものです。
本来、勉強というものは自分にあったやり方を見つければ、どの年齢からでも始められるものです。それに「学び続ける」ということは、自分のポジティブな気分の下支えにもなる。それを本書で知ってもらえれば、「自分は取り残されるのではないか」という漠然とした不安感からも解放されるのではないかと思っています。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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