インタビューほか

史上最強の完全合作! 阿部和重、伊坂幸太郎がそのすべてを語る
第2回 タイトルはこうして決まった! それ自体がすでに合作!

司会・構成: 杉江 松恋

『キャプテンサンダーボルト』 (阿部和重 伊坂幸太郎 著)

史上最強の完全合作! 阿部和重、伊坂幸太郎がそのすべてを語る<br />第2回 タイトルはこうして決まった! それ自体がすでに合作!

【注:こちらの記事は、単行本刊行時のインタビューです】

――前回は、合作という思いを胸に秘めて阿部さんが伊坂さんのいる仙台を訪ねられるというところまででした。2011年3月2日のことです。

伊坂 その時は、正直まだ、何をどうやるのか分からなかったんですけど、ただ、その少し前に、文庫になった阿部さんの『ミステリアスセッティング』を読んでいて、めちゃめちゃ僕好みだったんですよ。それで、打ち合わせの最初に、そのことをお話ししてみたんです。あの物語の、こういうところがよかったとか、こうしてみるとまたおもしろいかも、とか、いろいろと話していくうちに自然と小説のアイディアの話になっていって、「そういうふうに、これからやってみたいことをお互いに出し合ってみよう」となって、それでいつの間にか、合作の構想に入っていたんです。

阿部 伊坂さんがそうやってアイデアを最初から出してくださったのがよかったですね。じゃあこういう展開はどうだろうみたいに、そこからダーッとアイデアが出たんですよ。

伊坂 あの時はすごかったですよね。山形、仙台からいろんなキーワードが出てきて。僕は最初遠慮があったから、合作といっても『冷静と情熱のあいだ』みたいに、二人で別々に書くようなイメージだったんですよ。やはり阿部さんの領域には踏み込めないから。

阿部 僕もそうでした。でも、そうやってアイデアを応酬していくうちに、「これはふたりでもっと濃密な組み立て方ができそうだな」という手応えを受けたんですね。「これは間違いなくいけるな」と。その段階で全体のプランみたいなものはできちゃってましたから。

伊坂 山形と仙台だったら、間にあるのが蔵王だよね、とか。

阿部 ふたりがやるんだったら、そこからはこういうものが出てくるはずだね、というのを出していって、「じゃあ、これらを物語の全体にちりばめるとしたらどういう展開がありうるのか」という感じだった。やりたいことがかっきりあって、逆に言うとありすぎちゃったというのが問題だったんですけど(笑)。「それ、どうやってつなぐの?」みたいな感じになって。

伊坂 ええ(笑)。あ、それで3月4日にタイトルが決まるんです。打ち合わせを終えて帰ってからいろいろ案を考えて、阿部さんに「映画の『キャプテン・スーパーマーケット』とか、タイトルが僕、好きなんですよね」って送ったら、阿部さんが「キャプテンという言葉は使ったことがないからいいなあ。じゃあ、『キャプテンサンダーボルト』ってどう?」って。これ、今から思うと、その後の合作の進め方とも似てるんですよね。僕がアイデアを思いつくままに出していくと、阿部さんが「こうだろう」と言って決まっていくというのが。それで「キャプテンサンダーボルト、めちゃくちゃ、いいじゃないですか」と言って決定したんですよね。

――早いですね! しかし、1週間後の3月11日に東日本大震災が起きてしまいます。

阿部 そうなんです。しかも、伊坂さんは被災者ですから。

伊坂 大きな被害はなかったんですけどね。ただ、震災の後、何もかも嘘臭く感じられるようになって、小説はもう書けない、いや、書かないと思ったんです。けどそのとき「阿部さんとの合作はやりたかったな」と、そのことだけは本当に思ったんですよ。もし、今後また小説をやる気になったら『キャプテンサンダーボルト』だけはやりたいなあ、と。いろいろなことがありながらも、なんとなく、2ヶ月くらいぼんやりと暮らしていました。震災直後には、阿部さんからも気遣うメールを頂戴したりしてましたよね。

阿部 あれはまだ、メールが届くか届かないかもわからないような時期でしたね。

――そして次に二人が会われるのが。

伊坂 7月1日です。そこからは結構頻繁に会っていて、8月30日には蔵王に取材旅行にも行っているんですよ。ノリでいずれは取材にも一緒に行きたいね、とか言っていたのが実際にすぐ行くことになっちゃったという。「8月行っちゃう?」みたいな(笑)。

(続く)

史上最強の完全合作! 阿部和重、伊坂幸太郎がそのすべてを語る
第1回 ふたりで村上春樹さんとたたかう
第2回 タイトルはこうして決まった! それ自体がすでに合作!
第3回 全体の文体は? 「合作」を突き詰める
第4回 持てる技術をすべて注ぎ込んだ! 内容は、バディもの?
第5回 二度とこんなことはできない! 二人だからこそできた

キャプテンサンダーボルト
阿部和重 伊坂幸太郎・著

定価:本体1,800円+税 発売日:2014年11月28日

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