『「中年」突入!』を今読み返してみると、ほとんど毎日の晩御飯を自分で作って夫に食べさせてますね……ということは、まだこの頃には夫の帰りが毎日遅かったということですね……ま! 「お帰りなさい、美人妻より」なんてメモを書いてたり、キツいサイズの自分の靴を彼に伸ばしてもらったりもしてる。今じゃ考えられないなァ。この頃はまだ夫と仲良しだった(笑)。
ああ、自分の体のメインテナンスが大変、なんて書いてる。いま思えば、この四十歳頃の老け具合なんて全然たいしたことなかったんですよ。いまどれだけメインテナンスに時間をとられているか……。
阪神大震災、少年Aの事件もあったし、松田聖子さんの離婚と再婚、小和田雅子さんの皇室入りもしっかり書いてますね……この中で私、いろんな予言してますけど結構当たってるんじゃないですか。「将来小和田さんが生むだろうお子さんも、おそらく切れ長の目の、お雛さまのような顔をしていることであろう」なんて言ってるし、「松田聖子は優秀なギャンブラー」っていうのも、名言ですね(笑)。
全体的に感じることは、文章のなかに固有名詞が多い。人の名前なんて特に、いまではプライバシーの権利がうるさくなったから、ここまで何でも名前を書きません。校閲からチェックが入ります。時代ですね。
それから、体力が凄くあったんだなあ。年に七回くらい海外出張に行ったりしてますし、徹夜で原稿も書いている。今ではとっても無理なことをしてますね。『白蓮れんれん』もこの頃書いてる! 今年、NHK『花子とアン』のおかげで、本がまた凄く売れだして……二十年前のものがまた売れるなんて、本ってありがたい!
九〇年代ってどんな時代だったか。
まだインターネットがなかったことが今との最も大きな違いじゃないでしょうか。我々は新聞雑誌、テレビでいろんなことを知るけど、今の若い人たちはそんなもの全く見ないんでしょう。こちらが発信する前に別の情報源からいろんなことを皆が知っている感じがします。新聞に何回イベントの告知を出したって、テレビでスポット入れてもらったって、若い人には届かない。「知らない」って言うんです。じゃ、世間のことを何で知るの? と聞くと「ネットで全部見る」って。
今って、この世が二つできちゃってるんですね。
自分のことで言えば、例えば連載の担当編集者とも直接会うよりファックスでのやりとりがだんだん多くなって、携帯持つ人が周囲に増えてきていたかな。
私は、それまで生きてきた自分の仕事の業界とは違う、他の自分の世界を作りたかったのかもしれません。
京都に行く、日本舞踊を習う、着物をたくさん買う……和の世界に走りました。国立劇場で藤娘を踊るのに一体いくらかかったか……もう本当にこの頃はお金を使った。時間も今よりあったから、美味しいもの食べによく出掛けたし、パーティやイベントへのご招待も出来る限り貪欲に受けてました。遊びに使ったあのお金、老後のために貯金しておけば今頃どれだけ助かったかと思います(笑)。