──四月下旬に刊行の『裏切りの民主党』ですが、そもそも書こうと思われたきっかけは何だったんでしょうか。
若林 私も多くの国民と同じように、去年の政権交替にものすごく期待していました。公約通り、これからほんとに無駄を削ってくれるのかなと、事業仕分けのお手伝いまでしました。でも蓋(ふた)を開けてみたら効果がわずか一兆六千億円と、ほとんどガス抜きのような効果しかなくてがっかりしました。その後、二〇一〇年度の予算編成を見て激怒しました。国の借金が自民党政権でさえせいぜい年三十兆円台だったものが、なんといきなり、過去最高の四十四兆三千億円になりましたからね。なんだ、「コンクリートから人へ」でなく、「コンクリートも人も」だ、無駄は削れずに、ばら撒(ま)きが増えただけじゃないかと。いままで小泉行革にも期待しては裏切られましたけれども……。
──仕分けの手伝いといいますと?
若林 私は厚生労働省の研究所の職員から、内部告発をしてジャーナリストに転じた異色の経歴を持ちます。それで、仕分け人の一人、尾立源幸(おだちもとゆき)参議院議員から頼まれて、厚労省の仕分けの論点をまとめたり、事前の現地調査に同行し、官僚が嘘の説明をすると聞き直して訂正させたりしました。仕分け期間中の一ヶ月は、夜もろくに休まず、土日もすべて潰(つぶ)して、仕分けの論議のもととなる資料づくりをしました。というのも、初めて予算編成過程が公開されるイベントということで、ものすごく期待を持っていたからです。当初は高揚していましたけれど、途中から、あれ、あれ、あれ、ということが起こったんです。まず、現地調査に同行する私を見た厚労省から、私に手伝わせるなというクレームがきました。それで仕分け人が困って、目立たないように陰で手伝うことになりました。政治主導と言いながら、官僚優位が続いていることを実感しました。長妻厚生労働大臣の見識も疑います。
──それは長妻さんご本人からのクレームですか、それとも周りの秘書官みたいなところから?
若林 長妻大臣の耳に届いておらず、厚生労働省の担当部局レベルだと思いたいですね。