昨年、20歳で松本清張賞を最年少受賞し、『烏に単は似合わない』で単行本デビューした阿部さんは現在、早稲田大学の4年生。あれからちょうど1年で、2作目の本作を書き上げた。
「デビュー作は時間のない中で、よく分からないままにできてしまった感じでしたが、今回は自分の本がこうやって作られていくんだ、というのをじっくりと味わうことができました。装丁についても、イラストレーターの方に自分の希望をお伝えしたりして」
タイトルからも分かるように、デビュー作と関連のある2作目だが、元々はひとつの作品と考えていたという。
「まだ清張賞に応募する前の段階では、ふたつの作品を組み合わせて同じ時間軸で、同じ事件を男性と女性の視点から、交互か、あるいは前と後ろでたおやめの章、ますらおの章と分けて書くつもりでした」
人の姿をしながら鳥形にも転じることができる八咫烏の世界で、世継ぎの若宮の后選びのため宮廷に集められた4人の姫たちの熾烈な争いを描いた前作を女性視点とするなら、今回の作品は男性視点で書かれている。
后候補の姫を擁する東西南北四家。その中の北家と縁ある少年・雪哉はぼんくらと言われるが、ひょんなことから、うつけと評判の若宮に仕えることに。兄を追い落として世継ぎとなった若宮には敵が多く、権力争いが横行する朝廷内で、2人は次々と襲い来る危機にどのように対処するのか――。
「書きたかったのは男性たちの忠誠心、特に雪哉と奈月彦(若宮)の交流についてです。私は女子高出身なので、お前に男が書けるのかなんて友人に言われましたが(笑)、自分の中では雪哉は反抗期真っ盛りの子供で、奈月彦が一枚上手の母親というイメージ。この物語は反抗期の子供がどうなっていくのかという成長譚かもしれません」
取材中に見せてもらったが、この作品を書くにあたって、キャラクターの作りこみから家系図まで、実に綿密に綴られたノートが何冊もある。
「脇役1人でも本を1冊書けるくらい作りこんでいるつもりです。どこまで書かせていただけるか分かりませんが、シリーズのラストで書くことは決まっているので、ずっと書いていたい気持ちと、クライマックスを早く書きたい気持ちとありますね。これは語弊のある言い方かもしれませんが、ここまでが壮大な自己紹介で、次の3作目以降、本編の物語が始まると思っています。2人が暮らす山内が壊れていくのに、雪哉と奈月彦がどう立ち向かうのかが今後の大きな流れです。全力で駆け抜けて、さらにこれまで以上に面白いものを書いていきたい」
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