![自分の心の声を聞け!](https://b-bunshun.ismcdn.jp/mwimgs/a/9/1500wm/img_a9006fcb4089f6798be725ad58eb88cf34243.jpg)
──この本の中で松岡さんは、「日々の小さな達成感や喜びを感じとれる体質になろう」ともおっしゃっています。
松岡 言葉を替えれば〈感受性を強くする〉ということです。これも、この本の大きなテーマです。
テニスの指導などで子供たちと接して思うのは、感受性微弱の子が多くてかわいそうだな、ということ。なぜなら、喜怒哀楽の感情をしっかりもって、それをきちんと表現することは、人間として成長するためにも、意思表示をするうえでも、とても大切なことだからです。
感受性を強くするためには、やっぱり失敗も含めていろんなハプニングを経験しないと……。そういう経験をすることで、「あるがままに感じる心」も養われていき、自分らしく生きる技術を磨くこともできると思っています。
──「あるがまま」ということを、松岡さんは非常に重視されているようですが?
松岡 はい。禅宗の教えでは〈随所作主(ずいしょさくしゅ)〉というそうです。平たく言えば、「社会や人との関係の中で、自分らしく生きる」ということ。
「あるがまま」は「わがまま」とは違って、人間関係での距離感を測ったり、自分の気持ちをコントロールしたりしなければなりません。そのなかで自分らしさを出していくのですから、感受性微弱では難しい。あるがままの自分を見つけることは、僕の理想でもあるんです。
──松岡さんは感受性微弱ではないですよね?
松岡 基本的にはそうだと思いますが、やはり現役時代はテニスの試合に勝たなければ、ほかにどんないいことがあっても、心の底から喜びを味わうことはできませんでした。
今では、自分の企画で面白い仕事ができたり、人とのいい出会いがあったりしたら、もうそれだけでメチャクチャ喜べますよ。
──〈喜べる体質〉に変わってきたわけですね?
松岡 ええ。それには、あるきっかけがありました。
この本にも書いたのですが、ある先生から「脳をブルブル震わせるイメージをもつと記憶力や問題解決力が増す」と教えていただき、実行してみたら、かなり効果があったんです。それで先生にほめられたのですが、僕はカッコつけて、あまり喜ばなかったんです。そうしたら先生に、「なんでもっと嬉しがらないの!」と、叱られてしまって。
そのとき、「嬉しいときは子供みたいに無邪気に喜んでいいんだ!」と、ハッと気がついたんです。トンカチで頭を叩かれたような衝撃でしたね。それからですよ、ほんのちょっとしたことでも嬉しがる幸せな〈体質〉になったのは。