──そういう感動がなければ、何をやっても面白くない?
松岡 と、思います。でも、あまり偉そうなことは言えません。最近の僕は、自分の生き方に対して疑問や不安ばかりなので。一つひとつのことは本気でやっているのですが、「本当に一〇〇パーセント力を出しているのか? もっとできるだろう?」という思いが、いつもあるんです。
──そういう感じは受けませんよ。とくにジュニアの指導などを拝見すると、いつも熱い〈ガンバレ波動〉を感じます。
松岡 自然に出てくる波動もありますが、あえてつくりだしている部分もあるんです。自分で言うのもなんですが、そういう波動をつくりだすのが、僕はうまいみたいで(笑)。でも、自分自身への〈ガンバレ波動〉となると……。
──ちょっと弱くなっているような気がしますか?
松岡 そうですね。現役時代は、とにかく勝つことだけがすべてで、二〇〇パーセント本気で自分を応援していました。
現役を退いてから数年間は、テニスの普及や指導に突っ走っていたのですが、家庭をもってからは、家族との時間をものすごく大切にするようになって。それは悪いことでもなんでもないのですが、「ちょっと守りに入ったかな」と、罪悪感のようなものを感じてしまうこともあります。そんな自分を「日本人らしいな」とも思うんですけどね。
──そういうジレンマは、多くの人が抱えているのでは?
松岡 家庭をもてば、誰でもリスクは避けたいと思いますし、妥協しなければならないことも出てきますよね。でも、その一方で、人に認められたい、もっと自分に自信をもちたい、という気持ちもある。その狭間(はざま)で、みんな揺れるわけです。「俺は何のために生きているんだろう」と思うことが、僕にもよくありますよ。
──その意味では、今の松岡さんは読者と同じような壁にぶつかっているのかもしれませんね。
松岡 だからこそ、今まで自分がやってきたことを、この本にまとめて再確認したかった。そこからもう一度、〈本気〉に向かっていきたい、という思いが強いのです。
読者の方々だけでなく、僕自身にとっても、この本が、今のモヤモヤ感から脱却する一つのスタートラインになればいいな、と思っています。
──経済状況が悪化して閉塞感が強まっている今だからこそ、〈本気になってこそ人生を楽しめる〉というメッセージには重みがあると思います。
松岡 その楽しさは、アスリートがよく口にする「試合を楽しみたい」という感覚によく似ています。漫然としたものではなくて、自分自身を発見する努力の過程や結果を楽しむ、ということです。
〈本気になる〉というのは、自分が最も自分らしくいられるときだと思うんです。自分を本気にしてくれるのは自分だけ。他人は自分の人生を生きてはくれません。
自分自身で〈本気〉を見つけていけば、毎日が本当の意味で楽しくなるし、自分の役割や存在意義もしっかりと感じられるようになるはずです。誰の考えにも左右されない自分らしい人生って、そういうものではないでしょうか。
この本を読んだ方々が、自分らしくいられる心の状態を再確認して自信をもち、自分を再生させる喜びに目覚めて、少しでも元気になってくだされば、こんなに嬉しいことはありません。
──まさに〈人生の応援の書〉ですね。
松岡 僕の応援が誰かの励みになれば、僕もそこからもパワーを貰えます。応援には、するほうとされるほう、両方を元気にしてくれる力がありますから。そのパワーのやり取りを形にしたのが、この本なのです。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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