- 2015.02.01
- 書評
元サムスンの超エリート
張相秀さんが指摘する危機の要因
文:片山 修 (経済ジャーナリスト・経営評論家)
『サムスン・クライシス 内部から見た武器と弱点』 (張相秀 著/聞き手・片山修)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
「外患」はまだある。これまでウォン安を背景に業績を伸ばしてきたが、ウォン安修正に加え、円安も進行し、逆風下にある。これまでのように高い収益が確保できるのか。
日の出の勢いで業績を伸ばしてきたサムスンの経営環境には、このようにきわめて厳しいものがある。明らかに、転換点を迎えている。果たして、サムスンはどこへいくのか。
技術を盗む、技術者を一本釣りするなど、日本での評判がかんばしからざるのをものともせず、本書に勇気を持って登場してくれた張さんは、「サムスンのコーポレート・ガバナンス」「なぜ人材を引き抜くのか」「サムスンは社員を幸福にするか」「スマホ事業の黄昏」――など、私の疑問に対して率直に答えてくれた。本文にあるように、「石橋なら叩かずに渡る」「会長の決断を命がけで支える」「入社して25%が辞める」「サムスン電子の社長は報酬10億円以上」など、リアリティをもって赤裸々に内実を明かしてくれた。かといって、超ビッグ企業ながら、決して魔術を使う怪物ではなく、長所も弱点も抱えた企業であることを教えてくれるのだ。
その意味で、サムスンを知り尽くした張さんとの「対話」をもとにした『サムスン・クライシス』は、これまでのサムスン論とはまったく一線を画する。そこには、知られざる生きたサムスンの姿がある。
日韓関係がむずかしい局面の折から、さまざまな障害を乗り越え、張さんとのコラボレーション、すなわち“日韓共同”で、本書を出版できたことは奇跡的な事柄ではないかと、私は密かに自負している。
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