- 2015.02.01
- 書評
元サムスンの超エリート
張相秀さんが指摘する危機の要因
文:片山 修 (経済ジャーナリスト・経営評論家)
『サムスン・クライシス 内部から見た武器と弱点』 (張相秀 著/聞き手・片山修)
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
いま、なぜ、本書のタイトルにある『サムスン・クライシス』かといえば、世界の電機メーカーの頂点に立つサムスンは今日、一筋縄ではいかぬ「内憂外患」を抱えているからだ。
「内憂」は、サムスン総帥で二代目のカリスマ経営者、李健煕サムスン電子会長が昨年5月に倒れ、“トップ不在”が続いていることだ。果たして、三代目の事業承継はスムーズにいくのか。当面、集団経営で乗り切っていくのか。相続問題で、つぶれることはないのか。
「外患」は、業績の悪化である。「サムスン電子の営業利益は、ヘタをすると今期2兆5000億円まで落ち込むのではないか」「サムスン電子は、山の頂点に到達し、下山に向けて歩き出した」と、共著者の張相秀さんは、昨年秋、予言していた。
ここで、張さんについて紹介しておきたい。張さんは、3年前にサムスングループのサムスン経済研究所専務を退任し、現亜細亜大学特任教授である。在任中にサムスンの最強人事制度を設計したサムスンの超エリートビジネスマンだ。慶應大学大学院を卒業し、博士号をとっている。日本語はペラペラだ。2005年にサムスンの「サムスンHR(ヒューマン・リソース)コンファレンス2005」にパネリストとして招かれて以来、私は、張さんとは10年の付き合いである。
その張さんの予想通り、サムスン電子の14年12月期決算は、売上高が約22兆4400億円で前期比10%減。営業利益は前期3兆6000億円から32.2%減の2兆7200億円と、1兆円近く落ち込んだ。台頭著しい小米科技(シャオミ)など、中国メーカーの追撃にタジタジなのだ。
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