2014.12.12 書評

みんな読まないで! と自動車評論家が嫉妬
名車GT-Rを生んだ「カリスマ水野」の濃厚ミソ本

文: フェルディナント・ヤマグチ (コラムニスト)

『バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』 (水野和敏 著)

12月12日、元日産GT-R開発責任者のカリスマ自動車エンジニア・水野和敏氏が、台湾メーカーとの協働を発表! 公私にわたり水野氏を「追っかけ」てきた自動車評論家がその感動づくりの魔法を語ります。

 鬼才・水野和敏氏が新しく本を出されました。

 タイトルは『バカになれ! カリスマ・エンジニア「ゼロからの発想術」』。

 何とも刺激的なタイトルが付けられていますが、氏の言いたいことはつまり「エエカッコするな!」「恥をかくことを恐れるな!」「物知り顔をするな」ということです。

 当たり前ですが、飲んで騒いで大暴れすることを推奨している本ではありません。

 著者の水野さんは本当に凄い人で、私は名車GT-Rの取材を通して知り合ってからすっかりファンになってしまい、以来、水野さんに関しての記述は“記事”というよりもむしろ“ファンレター”に近いものになっています。それこそ原稿を入れた出版社からは、「公正性に欠けるので、少し書き直してもらえませんか?」と物言いがつくくらいの書き方です。つまりはそれくらいに水野さんを尊敬し、惚れ込んでいるのです。ともかくこの方は本当に凄いんです。

 昨年のちょうど今頃、こんなことがありました。

 週末に水野さんが拙宅に遊びにいらした時の話です。水野さんは「ちょっとツマミになる物を持って行くよ」と言って下さり、当日は鍋をぶら下げてやって来ました。で、「ちょっと火を借りるよ」と。キッチンに入り鍋を火にかけ、それが温まる間に持参した包丁でトントントンとプロのような手付きでネギを刻みます。

 水野さんが持って来てくださったのは肉じゃがでした。肉とじゃがいもと玉葱を甘く煮込んだ、ごく普通の、居酒屋でよく出るような、例のアレです。特に変わった物が入っている訳でもなく、ごくごくオーソドックスな物です。火が通りホカホカと湯気が立つ肉じゃがを器に取り分け、先程刻んだばかりのネギをパラパラと振りかけます。

 そして一口。

 ……旨い……。

 いままで食べたどんな肉じゃがよりも、繊細かつ濃厚でしっとり口当たりがよく、何とも形容のし難い天国の美味でした。

 10人程度の小規模な集まりだったのですが、その場に居る誰もが肉じゃがを一口食べると忽ち絶句し、しばらくしてから「美味しいねぇ」と目を見合わせました。そして全員が全員、口を揃えて「感動しました」と嘆息をついたのでした。

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バカになれ!
水野和敏・著

定価:本体1,300円+税 発売日:2014年11月27日

詳しい内容はこちら



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