*これより先、事件簿の一部作品について真相に触れている箇所があるので、本篇を未読の向きはご注意ください。
個人的には、事件の真犯人が特定の人物に容疑がかかるよう工作する点で共通する第一話と第四話の小説的な奥行きを高く買いたい。いずれの真犯人もその特定の人物に何か含むところがあったとは明言しないが、第一話の真犯人にとって彼の罪をなすりつけた同僚警官の行動はきっと“まぶしすぎた”のだろうし、第四話の真犯人の心奥には彼が忌み嫌って遂には殺害するに至った男と変わるところのない〈排外感情〉が隠れているのではなかったか……。
とまれかくまれ、安楽椅子探偵としてめざましい活躍をみせた静おばあちゃんが本書一冊きりでお役御免になるのはあまりに惜しい。と思っていたら、なんと二〇一四年十月刊行の最新長篇『テミスの剣(つるぎ)』で彼女、高遠寺静は現役の裁判官として再び読者のまえに姿をあらわすではないか! それは本書の第四話にて静おばあちゃんが生涯の痛恨事と回想する冤罪事件を扱ったもので、中山ファンにはおなじみ、埼玉県警の渡瀬刑事の修行時代(トレーニング・デイ)が描かれる。時代背景も出版元の垣根もこえて登場人物がリンクする〈中山七里ワールド〉から、読者はますます目が離せない。
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