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手でつくるということ

手でつくるということ

文:森 英恵 (ファッションデザイナー)

『グッドバイ バタフライ』 (森英恵 著)


ジャンル : #ノンフィクション

  私が追求してきたオートクチュールの作品づくりは究極の手仕事だ。白い木綿地のトワールでデザインをかたちづくり、何度も仮縫いを重ねて、手縫いで仕上げる。「手でつくる」、そのおもしろさ、喜び、大切さ……。これまでどんなふうに仕事をしてきたかを語ることで、手でつくる仕事の楽しさを若い人に受け継いでもらうきっかけになればと思った。

  パリでの仕事と生活にひと区切りをつけて数年。振り返れば、常に人々との交流があった。日本だけでなく世界中のいろいろな国、さまざまな宗教、職業の人たち。ファッションのつくり手として出会い、携わった仕事をとおして発見し、気づかされながら歩んできた半世紀以上の道のり。映画の衣裳づくりでは、監督から女性へのまなざしを学び、バレエのコスチュームでは踊り手の身体の動きをつぶさに観察し……、多くのことを勉強する機会に恵まれた。

  私はファッションデザイナーという仕事に人生をかけてきたが、いま自分があるのは、温かい手を差し伸べて支えてくださった方々のお蔭だと感謝の気持ちでいっぱいになる。この本が出来上がって、ますますそのことを深く感じている。

  現在は、「森英恵ファッション文化財団」をつくり、ささやかながら、好奇心の強い若手アーティストの手仕事を応援する活動をしている。

  また、二〇一〇年十月には新国立劇場でオペラ『アラベッラ』の衣裳づくりという大仕事を終えた。海外から才能豊かなアーティストたちを迎えて、ステージを共につくることは、西洋の衣服づくりを、自身の仕事としてつとめてきた私には改めて意味のあることだと思った。

  日本人である自分のルーツ、この国の中で培(つちか)われてきた伝統や文化が磨かれ、新しい時代にさらに世界へ向けて輝くようなお手伝いもしたい。新鮮な衣服は、人間のからだに一番近い文化なのだから。

グッドバイ バタフライ
森 英恵・著

定価:1890円(税込) 発売日:2010年12月16日

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