事件の犯行理由が報道されるとき「むしゃくしゃしてやった」というフレーズをよく見るけど、今どきの犯人ならふつうは「むかついてやった」と言いそうじゃないか。
スポーツ選手って、インタビューのときやたら「ハイ」って言って発言を終わろうとしないか。
……などなど、私は細かな言葉尻が気になるタイプなのです。
こういう言葉尻をねちっこく掘り下げて、週刊文春の片隅でこっそりと連載していたものがこうして本になりました。ありがとうございます。
当初は冒頭のように以前から気になっていた言い回しなどを取りあげようと思っており、特に時事ネタをやる気はなかったのですが、週刊誌での連載ということで、いきおいその時に流行っていたものを取りあげることも増えました。小さな連載だったから本になるまでに3年ほどかかり、今読むと時代を感じるような項もたくさんあります。こればかりは宿命です。
私の情報源はほとんどインターネットで、物書きをしているくせに新聞も取っていなけりゃ本もロクに読まない、そのうえテレビも見ないという、現代の若者を体現したような生活(年齢的にはもう若くないけど)をしております。そのため、有名人のツイッターやブログなど、取りあげるものが若干ネット発の情報に偏っていることは否めません。しかし、途中からはむしろそれを逆手に取り、インターネット上での騒ぎを遠巻きに観察したような内容も増えております。
言葉尻をサッとすくって軽く炒めただけの、前菜の詰め合わせ風になっておりますが、そのみみっちさをお楽しみいただければ幸いです。
(「はじめに」より)
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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