「丸かじりシリーズ」の文庫は本書で三十冊目になります。つまり、文庫という形態につきものの「解説」を二十九人の方々が書き継いできたのです。
わかりますよね?
書くことないんですよ。
アレを書こう、コレを書きたいと思ったことは、だいたい全部書かれてしまっている。
たとえば愛。私は四コマ目当てで毎日新聞を購読するくらい、「東海林さだお」が好きです。でも、みなさん大好きなんですね。東海林さんの画が。東海林さんの文章が。ほんとうに愛されている。
・たびかさなる夜逃げの際も、東海林さだおだけは、携帯することを決して忘れないで来た (5)ナマズ担当/高島俊男
・東北に井上ひさしがいて、九州に五木寛之がいるなら、東京・三多摩には東海林さだおがいる (7)鯛ヤキ担当/野村進
・やっぱり旅には、万が一の時に備えての東海林さだおだよね (19)昼メシ担当/室井滋
お世話になっている。学ぶところが多い。そんな声も多数聞こえてきます。
・飲食を職業とする僕にとって共感することも多く、おおいに納得し、参考にしながら、そして励まされてもいます (21)どぜう担当/田崎真也
・(対談した)この夜の訓練がその後出演したTVの食べ物番組でたいへん役に立ちました (15)タケノコ担当/川原亜矢子
・(早大漫画研究会の後輩は)絶対みんな、東海林さんの影響を受けていると思います (28)おにぎり担当/けらえいこ
・人生は一生勉強だ (26)パイナップル担当/吉田戦車
・東海林さんは私の大事な「髪の毛の師」である (2)キャベツ担当/阿川佐和子
じつは苦情もありました。
・海外で暮らす身にとってこれほど酷なものはない (16)ケーキ担当/雨宮塔子
・(ロシア人に紹介しようとして)わがロシア語力を総動員したのだが、ハッキリ言って放射線医学や遺伝子工学に関する会議の通訳の時より苦労したのだった (16)ダンゴ担当/米原万里
・夜、東海林さんの本を読む→夢に出てくる→食う→うまい→胃酸過多→胃潰瘍となりました (6)タクアン担当/清水ちなみ
なんでこんなにおもしろいんだろう? 一見平易な文章には、いろんな秘密が隠されているようです。
・庶民感覚に基づいていながら、品がある (4)ワニ担当/江川紹子
・やわらかい文章に時々むずかしい漢字、たとえば「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」などの文字を使うが、これはけっしてコケおどしではなく、その言葉がピッタリとおさまっているのだ (1)タコ担当/沢野ひとし
・〈たまらんですわ〉の使い方がたまらんですわ (29)メロン担当/太田和彦
・(カップ麺の)フタプラプラさせながら食べていて、終わりのほうになってカップを傾けると、フタがおでこに襲ってくる……まったくその通りじゃないですか! (22)パンの耳担当/岡江久美子
・氏は対象となるものの、まず立場に立つ。ナルトの立場に立って、はじめて「今はつらい」とわかるのである (9)駅弁担当/近田春夫
・「白湯」、ただのぬるいお湯について書こうという姿勢、書いてしまう力、読み手を深く納得させる魅力、これは全「丸かじりシリーズ」に通底している (23)ホットドッグ担当/角田光代
・ショージ主義には、「人は皆、平等なり」というフランス革命の精神が貫かれている (17)タヌキ担当/犬養裕美子
・東海林さだおは福沢諭吉か (3)トンカツ担当/ナンシー関
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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