――どんなことが気になったのでしょうか。
若者たちは無名で実績もありません。そんなに甘くないから、毎回都合よく小説になりそうな依頼はこないだろう。また、探偵を本業にしてしまったら、生活のためにしたくない仕事も引き受けなきゃいけない。
その対応策も、探偵たちに考えてもらいました。引き受けたくない依頼を断ったり、わがまま言えるように、探偵業で生活費を稼がなくてもよいかたちにしよう。それなら、平日は会社員をやっていて、週末だけ探偵をやればいい。
しかし、「週末限定」というのは、あくまで探偵側の都合です。依頼するお客さんからしたら、そんなことは関係なく、自分の抱えている問題を解決して欲しいでしょう。探偵と依頼者のギャップも盛り込みました。また、依頼の内容は、解決したら人生が変わるというわけではないけれど、依頼者自身のなかでずっと不思議に思っていたささやかな謎にしました。
――表紙に描かれているように、車掌車を事務所として使っています。
前から車掌車を事務所にしたら面白いだろうと思っていたんです。普通の若者が車掌車を入手するのは難しいから、どうやって事務所にしたのかを一話目で描きました。鉄道車両が出てきたから、鉄道ミステリの要素が入ってくるんじゃないかと思われた方もいるかもしれませんが、王道の展開にはしたくなかったので、それは入れませんでした。
――本書は連作短編ですが、章ごとにテイストが違いますね。
同じパターンにならないようにしました。最初から最後まで、かっちり決めて考えてから書き始めたわけではありません。湯野原海や瀧川一紀の探偵ふたりと一緒に考えながら、ころがるにまかせて書いていきました。探偵たちの思惑とは違って、意外に恐ろしい犯罪に巻き込まれていきます。
作者が言うのも何ですが、表紙に惹かれて手にとってもらえたら、中身もその通りなので、楽しく読んでいただけると思っています。
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