日本は官僚国家だといわれる。政治・行政を動かしているのは官僚達であって政治家ではないというのだ。もちろん、どの国でも官僚はテクノクラートとしてそれなりの役割は果している。しかし、行政の大枠、予算の大枠は政治が決めるのが通常のパターンだとされている。しかし、日本の場合、官僚組織、特に主計局、主税局を持つ財務省がその大枠を決めているというのだ。財務省主導論の是非はともかく、財務省が日本の政治、行政の中で極めて重要な役割を果しているのは確かであろう。
本書はその財務省を人事という側面から分析した好著である。著者はかつて大蔵(財務)省の記者クラブである財政研究会に読売新聞記者として所属。当時から人事についての情報はたしかなもので、しばしば先の人事を正確に予測したりしていた。記者クラブというのは外国にはないユニークな組織で、記者達は省内を自由に動き回れる。ほとんど一日中、省内にいて誰かと話している訳だから、優秀な記者はその省について大変な事情通になる。筆者等もそうした記者に、「今度は僕は何処にいくのかな」等と自分の人事を聞いたことさえある。
官であろうと民であろうと、組織の要(かなめ)は人事である。正確には人事と予算だが、役所の場合、予算は国会で決められており、一旦決まったものは一部局では動かすことは出来ない。となると、ポイントはまさに人事である。何かをやろうと思っても、それが出来るポストについていなければ、どうにもならない。特に役所の場合、法律でそれぞれがやれることが定められている。別に偉くならなくても好きなことが出来ればいいという考え方も、仕事以外ではありうるのだろうが、こと仕事に関しては、少なくとも役所では偉くならなくてはどうしようもないのである。もちろん、偉くなっても何もしない人達は多い。しかし、何か新しいことをやりたいと思ったら、それが出来るポストにつかなければどうにもならないというのが現実でもある。
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