――他にも、天覧試合、小川健太郎の背面投げ、江川卓の甲子園、日本シリーズ阪急対ヤクルト戦(昭和53年)での上田利治監督の抗議など、いまもファンの記憶に鮮やかな場面が取り上げられています。12の“伝説”を選ばれた基準は何だったのでしょう。
二宮 古い話を除いては、自分がリアルタイムで見て強く印象に残っていたものが中心です。たとえば江川卓。昭和48年の春のセンバツ開幕戦で、ダイナミックなフォームから、これまで見たこともない剛速球が投げ込まれるのを見て、本当に驚きました。19三振を奪って完封勝ちした後に、江川が「今日は調子が良くなかった」とコメントしたときには、さらに驚かされましたけどね。
相手がバントでゆさぶろうとしても、江川の球はバットの上を通り、まともに当てることすらできない。大変な投手が出てきた、と興奮しましたよ。だって、江川の試合を見た夜にプロ野球中継を見ると、プロの球が遅く感じたんですから。
――巨人のV9や黒い霧事件など、この本には収められていない“大事件”もたくさんありますね。
二宮 そうなんです。巨人がV9を決めた昭和48年、2位阪神は残り2試合で1勝すればいい、という圧倒的優位にあったのに、なぜ2試合とも惨敗したのか、大いに疑問です。江川の“空白の1日”も謎だらけですしね。
実は巨人に関しては、ある有望投手が突然、世を去ったことがあります。この真相についても取材しているのですが、関係者の口が重い。宿題が残った感じです。球界の伝説はまだまだ尽きません。この連載は、これまでの仕事中で最も楽しんでやれました。だって、早く次の〆切が来ないかな、と毎回ワクワクしたことなんて、これまでありませんでしたから(笑)。
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