- 2012.01.23
- 書評
子を残しにくいはずなのに、なぜ遺伝子が?
文:竹内 久美子 (動物行動学エッセイスト)
『同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか』 (竹内久美子 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
私がこの10年ほどの間に論文を読み、仰天した研究。それは二つのグループによってなされていて、どちらも同性愛についてのものである。
1つはスウェーデン、カロリンスカ研究所のグループによるもの。
彼らは医療技術であるPET(陽電子放射断層撮影法)によって、男性異性愛者、男性同性愛者、女性異性愛者、女性同性愛者の脳の興奮状態を調べた。それにより、同性愛が脳の反応というレヴェルでも解明された。さらにこれまでよくわからなかった人間の性フェロモンについて、これだというものがわかってきたのだ。
もう一つはイタリア、パドヴァ大学のグループによるもの。
同性愛者は同性を愛し、子を残しにくい。なのにいつの時代にも存在し、消え去ることがない。有史以来とも言えるこの謎が、ついに解き明かされたのだ。
しかもそれは、何とまあコロンブスの卵であろうかというものだった。こうして私は、本書を書きたいという動機が、高まりに高まったのである。
そもそも私は同性愛者に対し、否定的な感情を抱いたことがない。私が思春期以降に好きになったり、尊敬したりする人物にはなぜか男性同性愛者か、そう噂される人物が多かったのだ。
レオナルド・ダ・ヴィンチ、指揮者で作曲家のレナード・バーンスタイン、ポップ・アートのアンディ・ウォーホル、三島由紀夫、エルトン・ジョン、「クイーン」のフレディ・マーキュリー……。
これら天才的な人物たちに対し、どうして否定的感情など芽生えようか。私は、同性愛と天才的才能とはセットになっている――そう考えるところから出発したのである。
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