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二〇一一年二月七日、小沢一郎の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた衆議院議員・石川知裕被告ら、元秘書三人の初公判が、東京地裁であった。
三被告とも起訴事実を否認して無罪を主張したが、検察側は冒頭陳述で「会計責任者の大久保隆規被告が、水谷建設に胆沢(いさわ)ダム工事を下請け受注させることを了承した謝礼として一億円を要求し、〇四年十月十五日に石川被告、〇五年四月十九日に大久保被告が、五千万円ずつ受領した」と主張している。
この公判とは別に、検察庁の不起訴をくつがえし、検察審査会が強制起訴した小沢一郎被告の同罪による公判が進められる。期日は指定されていないが、遠からず始まるだろうから、本書の刊行は絶妙のタイミングといえる。
裁判は独立しているから、一方は有罪、一方は無罪ということは理論的にはあるだろう。それはそれで構わないけれども、事件の背景や土壌に、どうメスが入り、光が当てられるか――。日本の裁判は、その辺りが不得手で、刑事責任の有無が争点になる。
初めに書いたように、著者の度胸のよさと大胆さによって、事件の背景と土壌が明らかになった。第四章「裏金づくり――捜査の網をかいくぐる術」がハイライトで、こういう商法があることを初めて知った。その取材力と解説力に、ひたすら舌を巻く思いだ。
ジャーナリスト出身だからこそなし得る技で、小説家など及びもつかない。それにしても取材費は、ずいぶんかかったことだろう。昨今はノンフィクションの不振がいわれ、要するに娯楽小説のようには売れないらしい。もはや前期高齢者で、社会のお荷物になりつつある者が言うのもおこがましいが、こういう本こそ売れてほしい。この拙文を読まれた方は、ぜひ書店で購入してください。そうして口コミで宣伝してください。きっと森功さんは裏切ることなく、次のテーマでは、さらなる度胸のよさと大胆さで、新境地を拓いてくれることでしょう。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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