──フィッシャーは日本のマスコミにも登場したことがありましたね。
小川 羽生さんをはじめ支持者の方々の尽力で、アメリカへの強制送還は免れ、結局はアイスランドが受け入れてくれることになったんです。それでも、テレビのニュースで見ていたら、日本を発つとき、滞在を認めない日本に対して悪態をついていましたね。
──小説の主人公のリトル・アリョーヒンのモデルは名前からしてかつての世界チャンピオン、ソ連のアレクサンドル・アリョーヒンですね。
小川 モデルというわけではなく、アリョーヒンと背中合わせに生きたような人物がいたという設定にしてみようと思ったんです。
──少年のイメージですね。
小川 年齢ははっきりさせていないんですけれど、身体が大きくならないんです。私の中で、身体が大きくならないということは、あまり長生きできないというイメージがあるんですよ。成長せずに、ある一点にとどまっているということは、いつそこから足を踏み外してもおかしくない、危険な場所にしか居場所を見つけられない、という感じです。
──他の登場人物も個性的で多彩ですね。
小川 今回は、チェス盤とともに世界を旅する話にしようと思っていたんですが、書き始めてみるとあまり移動していないですね(笑)。狭い場所しか知らない者同士が出会って、すごく深いものを得るという話になっています。
──チェスの知識がなくても、楽しく読めますが、文中にf6やa8というような記号が出てきます。チェスを知っているとより面白く読めるのでしょうね。
小川 私もいまだにチェスは指せません(笑)。本の始めにチェス盤の図と駒の動きを載せています。f6やa8は位置を示しているんです。a8でしたら端っこですね。
それと、いろいろ対戦のようすを描写しているんですが、それは英文学者でチェス・プロブレム作家の若島正先生に見ていただきました。アレクサンドル・アリョーヒンの若い頃の実際の棋譜を、そのままだと面白くないので、この小説に合わせて手を加えて載せているところがあります。それに気がついてくれる読者が現われてくれるといいなと思っているんですけれど。
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