──二〇〇一年に現代書林より刊行された単行本『アトピーはもう難病じゃない』が題を改め、加筆の上に文庫化されました。タイトルは『そのアトピー、専門医が治してみせましょう』。そもそもどうしてこの本を書こうと思われたのでしょうか。
菊池 アトピーで悩んでいる患者さんに正しい知識を理解してもらいたい、そして治ってもらいたい、ただその願いからです。アトピーとはこの場合「アトピー性皮膚炎」のことを指すのですが、これがいまだに驚くほど誤解されています。僕が医者になった二十数年前、アトピーはごく一部の人にしか起きない遺伝性の病気だとされていましたが、現在では両親ともにアトピーを持たない患者さんが大半を占めています。確かに皮膚のバリア機能などの先天性素因も重要ですが、お母さんの胎内や幼少期の環境因子が発症を大きく左右します。
つまり、何らかのきっかけで免疫のバランスが崩れ、同時に皮膚のバリア機能が低下するとアトピーは発症します。専門的には、リンパ球のうちのT細胞は、周囲の環境にきわめて敏感に反応するため、ごく身近にある食品添加物のような化学物質や、車の排ガスなどの窒素酸化物、ディーゼルエンジンの排出する微粒子などにも影響を受けやすいのです。他にも、ストレスや環境ホルモン、抗生物質の濫用など……。要するに、そういった現代の都会に溢れる様々な因子が体内の免疫システムを狂わせた結果起きるのがアトピーなのです。
──読み進めるにつれて、これは他人事(ひとごと)ではないと思うようになりました。今や現代病の代表格と言われる花粉症も、免疫のバランスが崩れて起きるという点で、発症のメカニズムは同じなのですね。
菊池 アトピー体質という点では同じです。免疫の異常に引き続き、皮膚に湿疹が出るのを「アトピー」、鼻や眼の粘膜に痒(かゆ)みが出るのを「花粉症」と呼びます。つまりアレルギー(免疫のバランスが崩れた状態)を持っている人は体の中に火種を抱えているようなもので、ちょっとしたきっかけがあれば、いつそこからアトピーを発症させてもおかしくないのです。
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