──改めて怖いと思ったのが、病気に対する誤解。医者でさえアトピーを十分理解しておらず、不適切な治療が原因でアトピーを誘発させてしまうこともあるとか。
菊池 この本でも詳しく書きましたけど、小さいお子さんの湿疹にはとくに注意が必要です。と言いますのは、子どもに湿疹があればすべてアトピーと診断してしまう小児科の先生が現実に大勢いるのです。乳児の場合、「乳児脂漏性(しろうせい)湿疹」や「接触皮膚炎」をまず第一に疑うべきなのですが、それをいきなりアトピーと診断してしまうと、後々ややこしいことになりかねません。最悪の場合、本当のアレルギーを誘発させ、取り返しのつかないことになってしまうこともあるのです。
──治療法を間違えることで、新たなアトピー患者を生むケースがあると。
菊池 はい。わかりやすい例を挙げれば、最近シャンプーや洗剤にかぶれる肌の弱いお子さんが増えているのですが、こういうケースで最初の指導を誤ると、悲惨な状況を招きます。本当は石鹸でかぶれガサガサしているのに、たまたまその子を風邪で診た小児科医が「この子は皮膚が汚れているから薬用石鹸でよく洗って下さい」なんて誤った指導をする。すると、大切な皮膚のバリア(角質)がさらに失われ、正常であれば無縁だったダニやハウスダストといった身の周りのありふれたアレルゲンが、表皮の免疫細胞と反応しやすくなります。まさにそれがアトピー発症の引き金になることもあるのです。
──一時期、アカスリがブームになりましたが、ああいう行為もアトピー患者にはよくないのでしょうか。
菊池 非常に悪いですね。肌の弱い人にとっては自傷行為と言えます。アカスリはバリアを構成する角層の部分をこそぎ落とし「垢」として見せているだけなので、この「垢」は本来正常な角質そのものなのです。やりすぎれば「因幡(いなば)の白ウサギ」状態になってしまいます。
そもそも日本人は過剰なまでにきれい好きなのです。現在は昔と比べ石鹸も洗剤も非常に性能が高くなっていますし、子どもに限らず肌が敏感な人が増えています。それなのに、昭和四十年代のような、週に二回しか銭湯に入れなかった時代のイメージをひきずり、毎日石鹸やタオルでごしごし身体を洗ってしまっては明らかにやりすぎです。乾布摩擦なども「やれば誰でも健康になる」というのは大間違い。皮膚に痒みのある人は絶対に止めて下さい。
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