書評

予言村の転校生が怪事件の謎を追う「ほのこわ」青春ファンタジー、待望の続編!

文: 東 えりか (書評家)

『三人の大叔母と幽霊屋敷』 (堀川アサコ 著)

 さて3巻目となる『三人の大叔母と幽霊屋敷』は、村長選挙から約半年後の物語である。前の職場では「ミスター・ゴメンナサイ」と言われていた村長で父親の育雄も、いくらかその職に見合うようになってきたようだ。

 娘の奈央もこよみ村中学、通称「こよ中」の2年生。各学年20人ほどの1クラスずつで、こじんまりした学校だ。元アイドルで今は農業家とエッセイストを名乗る溝江アンナの息子、麒麟と付き合っている。この麒麟少年、ものすごい美形で村の女子がみんな憧れているのだが、本人はいたって地味で、この村の民俗学調査に夢中である。麒麟に夢中の少女のひとり、大谷沙彩とはいろいろな経緯があったにせよ、いまでは仲良くやっている。

 湯木一家が以前暮らしていた竜胆市とこよみ村には鉄道が通っているが、通うには遠く、竜胆市の高校に進学する生徒は、下宿をする者と無理に通う者に分かれるらしい。竜胆市には奈央の親友の静花や、育雄のライバルで開発推進派の親玉、こよみ村きっての大金持ち十文字丈太郎の孫である覚が住んでいる。何か事件が起こると彼らは一致団結し、大人顔負けの少年探偵団のような大活躍をする。

 しかしこのこよみ村、奈央の祖父の勘助が死んでから半年しか経っていないのに、けっこうな大事件が頻発している。

 村長選のさなかにはこの予言暦をめぐって争奪戦が起こっている。転校生である奈央も巻き込まれ、不思議な体験をした。殺人未遂や毒物混入のような現実的な事件から、幽霊や宇宙人まで出現するという超常現象までワイドショウ的に飽きない土地である。

 そして秋も深まった10月末。村人とこよ中とが一緒に楽しむ収穫祭という名の文化祭が計画された。村中が知り合いみたいな場所だから、こういうお祭りは総出で楽しむ。だが小さいコミュニティだからこそ、ヒエラルキーに雁字搦めにされてしまう。

 そして再びの予言暦の盗難。その解決には悲しい恋の結末が潜んでいる。

 タイトルになった「三人の大叔母」は、第1巻目から登場しているマクベスの口うるさい魔女によく似た三姉妹。長女の繁子が遺産相続問題で里帰りをしたのを追い、妹の竹子、末っ子の花子までこよみ村に戻ってきてしまう。ガミガミ言う大叔母たちに閉口する湯木一家だが、彼女たちが戻ってきたのには理由がある。子供の頃の怖い経験の記憶が関係し、ある悲しい一家の物語が隠されていた。

 予言暦の謎は、この3巻でほぼ解明された。だが、この村にはまだ何かありそうな気がする。スリリングな村の活劇をもっと読みたい。

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三人の大叔母と幽霊屋敷
堀川アサコ・著

定価:本体740円+税 発売日:2016年09月02日

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