書評

予言村の転校生が怪事件の謎を追う「ほのこわ」青春ファンタジー、待望の続編!

文: 東 えりか (書評家)

『三人の大叔母と幽霊屋敷』 (堀川アサコ 著)

 堀川アサコがデビューして今年で10年になる。第18回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を『闇鏡』という作品で受賞した。この時の大賞は『僕僕先生』の仁木英之。新人賞としては稀にみる高レベルの闘いであったようだ。選考委員の荒俣宏は仁木を、椎名誠は堀川を押し僅差で堀川が優秀賞となった。ただ、その実力通り、10年後、ふたりとも大人気作家となっているのは喜ばしいことだ。

 堀川アサコの人気はどこからくるものだろうと、ある書店員と話をしたことがある。そのとき初めて彼女の小説を称して「ほのこわ」というのだと聞いた。超常現象も幽霊も登場してくるけど、それらがほんのちょっと怖くて悲しい。人の気持ちだけでなく、怪異の気持ちまで読者はわかってしまうから「ほのこわ」。言いえて妙だなあと感心したものだ。

 だが、今回「予言村」シリーズを改めて通して読み、気づいたことがある。それは人間の怖さだ。日々のニュースに流れるように、人はちょっとしたことで殴り、殺し、捨てる。その当事者になったときの恐怖はどれほどだろう。本書の中で奈央が、麒麟が、アンナが受けた暴力の恐ろしさは読者にストレートに伝わった。堀川アサコの小説には、その恐怖を感じさせる迫力がある。そこに魅力のひとつがあると思う。

 その魅力を知らしめた「幻想」シリーズ(講談社)はトータルで40万部に迫る勢い(2016年・7月現在)で、他にも「たましくる」シリーズ(新潮社)や『大奥の座敷童子』(講談社文庫)など精力的に作品を発表し続けている。デビュー作の『闇鏡』も『ゆかし妖し』(新潮社文庫nex)とタイトルを変えて読者の手に届くようになった。

 さて堀川アサコという作家はこれからどこを目指すのだろう。

 2016年6月に出版された『ファンタジーへの誘い ストーリーテラーのことのは』(徳間書店)は、現代の人気ファンタジー小説家10人へのインタビュー集である。

 その中で自分の読書の原体験や好きな小説家である筒井康隆や司馬遼太郎について語り、自著にたいする解説も行っている。その最後、「物語を紡ぐということは?」という質問に対して、こう答えている。

 ――平安末期に書かれた『梁塵秘抄』のなかにある“遊びをせんとや生まれけむ”、あれが私の基本なんです。(中略)小説を書くということは、仕事というより遊びであり、戯れ。物語を作るという遊びを職業にできて、ようやく人心地ついているところです。この遊びのなかに、読んでくれる読者の方も引き込みたいという思いで、日々書いています――

 引き込まれたい読者急上昇中の堀川アサコ。おおいに遊んで小説作りを楽しんでほしい。

三人の大叔母と幽霊屋敷
堀川アサコ・著

定価:本体740円+税 発売日:2016年09月02日

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