- 2015.09.29
- 書評
「幻想」シリーズの堀川アサコ
「予言村」シリーズも快進撃!
文:藤田 香織 (書評家)
『予言村の同窓会』 (堀川アサコ 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
誰にでも経験があることだと思われますが、学校や職場、あるいは合コンや旅先であっても「なんか気になる」という人と出会ったとき、一歩踏み込む瞬間、というものがありますよね。誰かと話しているところを目で追って、どんな人なのか観察する。機会があれば話しかけ、言葉使いや態度を見ながら距離をつめていく。趣味や好みが似ていたり、あるいは、まったく自分とはタイプが違うのに心惹かれる部分が見つかると、それだけで嬉しくなって、この人をもっと知りたい、と思う。
作家と読者の出会いもまた同じです。書店の店先や新聞・雑誌の書評、インターネットの情報などで、ふと気になった作品に目を止める。「試しに」と読んでみる。その結果、満足できればもちろん、たとえ予想していた展開とはちょっと違っても、どこかしらに魅力を感じれば、その作者の違う作品も追いかけてみたくなる。そうして自分の「好きな作家」を見つけていくのです。
二〇一四年七月に刊行された『予言村の転校生』に続く「予言村」シリーズ第二弾となる本書『予言村の同窓会』は、前作からの読者は改めて、そして初めて堀川アサコさんの小説を読む、という人にとっても「出会えて良かった」ときっと思える、お楽しみ要素がぎゅぎゅっと詰まった、お得で贅沢な物語です。
たとえて言うなら、それは、子どものころ、缶入りドロップスを手にした時のような楽しさでしょう。なにが出るかな、とシャカシャカ缶を振り、好きな色が出たときの歓び。味も違う、形も違うドロップを、ゆっくりと玩味する時間。そんな幸福感によく似ています。まずはその、実に心ニクイ本書の味を堪能する前に、簡単に物語の背景をおさらいしておきましょう。
舞台となるのは、四方を山に囲まれ、鳥も通わぬほど辺鄙で周辺住人からは陸の孤島と呼ばれる「こよみ村」。こよみ村には昔から〈日照りも干ばつも、事件も事故も全部が予言されていた〉という伝説があり、それを記した「予言暦」なる書物があると噂されていました。シリーズタイトルの「予言村」は、そこからきているわけですね。
前作の『予言村の転校生』では、主人公である湯木奈央が新学期から中学二年生になる春休み、父の育雄が湯木家のルーツでもあるこよみ村の村長選挙に立候補する! と言い出す場面から幕を開け、無事に当選した四月から、夏休み最後の日を迎えるまでの月日が綴られました。育雄と共に隣接する竜胆市から、こよみ村に居を移した奈央は、わずか四ヵ月の間に次々とトラブル&事件に巻き込まれていったのですが、そこには閉ざされた村の特異な風習・風土が深く関わっていたのです。
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