- 2014.10.24
- インタビュー・対談
映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念
三浦しをん×大森立嗣
緊張感と、心地よさ
「本の話」編集部
『まほろ駅前狂騒曲』 (三浦しをん 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
三浦 私は今回の映画を観て、この2人はあきらめない人たちなんだなと思いました。何ももっていない、寄る辺もないけれど、絶対あきらめない。自分にとって大事なもの、おそらく監督がおっしゃった愛のようなものだと思うんですが、そういったものを常に求め続け、探し続ける。手に入らないかもしれないけど、あきらめない。そこが一緒だから2人はうまくいくのかも、と気づかされました。
大森 完成した映画を観て、30すぎた男たちが「逃げるなよ」なんて言いあっているのが……
三浦 青臭い(笑)。
大森 「バカだな、こいつら」ってちょっと笑いながら感動しちゃう感じですよね。ちゃんと生きてるんだなあって。
三浦 そういう青臭さや泥っぽさがなければ絶対に手を差し伸べられない瞬間、そこで格好つけていたら絶対に手遅れになる瞬間というのがあると思うんです。ところが大体の人は、恥ずかしいし、そんな自分を見せたくなくて、その瞬間を逃がしてしまうものです。
大森 でもこの2人だと暑苦しくなく、すごく上手くいく。
三浦 瑛太さんの多田と松田さんの行天だからでしょうね。
まほろという街の豊かさ
大森 三浦さんが『便利軒』の最初のほうで書かれているように、舞台となるまほろ市という街にはいろんな人がいる感じを出したいと思ったんです。女子高生からちょっと悪いヤクザっぽい人、子ども連れのお母さんからフリーター、老人が同居している街。まほろの豊かさというのは、お互いちょっと微妙に嫌だったりするんだけど、いろんな人が一緒にいちゃう感じがいいなあと。
三浦 同じ街に住んでいるからしょうがない。
大森 「しょうがないけど、認めてるわけじゃないよ」という微妙な大人な感じが結構好きなんですよね。「ダッサーイ」って思ってるんだけど、一緒にいなきゃいけない、みたいな(笑)。
三浦 「しょせん、まほろだしな……」みたいな(笑)。
大森 そう、「しょせん、まほろ」みたいなところが結構好きかな。
三浦 それは「家族って本当に温かい」的な感じではなくて、「マジうぜえ」「マジやりきれねえ」という家族に対する感情と似てる気がします。いざ相手がいなくなったら、「あれ?」ってちょっと気が抜けるような感じが、まほろの人たちの顔つきにすごく現れてますよね。
大森 そういうのがやっぱりいい。
三浦 子役もよかったですね。映画の1作目にも出てきた由良公(母親の依頼で多田便利軒が塾へ送迎代行した小学生男子、由良。多田たちに由良公と呼ばれている)はいつもムスッとしている。
大森 ちょっと下から見上げるようなね(笑)。もう僕の中では演じている横山幸汰くんと由良公が一体になっちゃっています。
三浦 今回のちょっと成長した由良公も、はるちゃんもすごくよかったです。子どもへの演出はどうされていたんですか?
大森 はるちゃん役の岩崎未来ちゃんは撮影当時まだ幼稚園児で台本を読めないので、お母さんに「あんまり台詞に抑揚をつけないで覚えてください」というようなことは伝えるんですよ。由良公はもう自分で台本も読めるんですが、共演シーンが多かった龍平さんが「このままだとお前、はるちゃんに負けちゃうよ」などと意地悪なことを言って(笑)。
三浦 そんなことを言って、確信犯的に焚きつけて(笑)。
大森 由良公も瑛太さんと龍平さんをすごく信頼しているんですよね。だから頑張ってましたよ。
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