2014.10.24 インタビューほか

映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念
三浦しをん×大森立嗣
緊張感と、心地よさ

「本の話」編集部

『まほろ駅前狂騒曲』 (三浦しをん 著)

映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念<br />三浦しをん×大森立嗣<br />緊張感と、心地よさ

大人気“まほろ”シリーズの映画2作目がついに公開。原作者と監督が語る“まほろ”独特の空気感の秘密、そして2作目ならではの変化とは――。

人気シリーズの重圧

三浦 大森監督が撮ってくださったシリーズ1作目「まほろ駅前多田便利軒」(以下「便利軒」)を観て、自分自身が何を書いたのか初めてわかったような気がしたんです。監督が原作から読みとってくださった投げやりと紙一重の虚無感のようなものがストンと胸に入ってきて、「そうか、非常に残酷な話だなあ、この話を考えついた人は人非人だなあ」と(笑)。「便利軒」の映画公開中に執筆していた『まほろ駅前狂騒曲』(以下「狂騒曲」)は、映画への返答として、その虚無感をどう越えるかというのが頭にあったんですよ。そうしたら、今回の映画でもまた監督からすごく鋭い球を投げ返された。本当に刺激的で楽しい経験です。

大森 実は今回、ベストセラーシリーズをまた映画化させていただくにあたって、かなりプレッシャーがあったんですよ。ただ単にお客さんが入る映画をつくるということだと、僕が撮る意味がない。じゃあどう撮るかと考えていたとき、主人公の多田と行天がそれぞれもっているルールみたいなものが、この映画の中でやっていいこと悪いことになるんだと気づいて、すごくやりやすくなりましたね。

三浦しをんみうらしをん/1976年東京都生まれ。2000年『格闘する者に○』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞。近著に『政と源』。

三浦 「狂騒曲」では瑛太さん演じる多田と松田龍平さん演じる行天は、事務所での同居も3年目で気心の知れた感じはあるけど、馴れ合いにはなっていないんですよね。今回、事務所で行天の娘はるちゃんをしばらく預かることになって、2人だけのときとはまた違う距離感になる。互いにどこまでどう踏み込むのか、間合いを測る感じが事務所のシーン全体に緊張感を与えていますね。その中にも笑いがあって、行天の絶妙におかしい間とか発言も無神経には映らなくて。むしろ、行天はすごくよく人を観察していて、どこまでの距離なら相手を傷つけないかを見ている人間なんだと、映画を観ていて思いました。

大森立嗣おおもりたつし/1970年東京都生まれ。2005年長編監督デビュー。13年「さよなら渓谷」でモスクワ国際映画祭審査員特別賞。

大森 行天は動物的に人と間を取っている気がしますね。独自の倫理観のようなものがある。龍平さん自身も行天に近い部分がかなりあるんじゃないかな。本人も1作目を撮り終わったあとに「俺、実はわりとやりやすいんだよね」みたいなことを言ってましたから(笑)。

三浦 あはは、それはすごい(笑)。

大森 今回も撮影前にみんなで飲んだ時に、場が熱くなっているのに龍平さんはさっさと「俺、帰る」って帰っちゃったから。残された我々としては「待ってくれ、お前」みたいな感じですよ。でもそのときに「あ、この映画、やっぱり大丈夫なんだな」って思いましたね。龍平さんが完全に行天そのもので(笑)。

三浦 自由人ですねえ。私自身は理想は行天だけど、どちらかというと体面を繕おうとして失敗して自爆する多田タイプかな。

大森 僕も行天に憧れはあるんですけど、どう見ても完全に多田ですね。

三浦 今回の映画でも、「あー、多田ぁー」というシーンがいっぱいあって、かなり身につまされました。行天の奔放さに憧れます。

大森 みんな憧れるでしょう。でも行天だけがいても彼の特異性は見えてこない。

三浦 そうですね、瑛太さんをはじめ、役者さんや監督とスタッフが築き上げる空間があってこそ。その空気感は心地よくありつつも、ほっこりとは真逆の、すごく鋭いものだと思いました。2人は3年も同居しているし、まほろの街に顔なじみも増えて映画の前半は特に軽快で楽しいんですが、この日常がいつ崩れるかわからない、薄氷を踏む感じの緩急や塩梅が絶妙で、すごくよかったです。

大森 2作目だからという余裕は本当に全然なかったんですよ。原作もすばらしいし、前作からの3年の間に瑛太さんはかなりの数の舞台に出演して、龍平さんは賞をたくさん取ったり、「あまちゃん」に出たりして、それぞれ力をつけてくる。問われているのは自分、という気分にだんだんなってくるんです。だから、瑛太さんと龍平さんが一緒のシーンは緊張感がありましたね。

三浦 ほとんどのシーンが該当するじゃないですか(笑)。

大森 そうなんです(笑)。2人とも意識がすごく高くなっていて。前回は彼らもまず演じることに集中していましたが、今回は僕を含めた3人でかなりコミュニケーションがとれるようになりましたね。はじめてはるちゃんに触れる場面もどう触れるか意見を言い合ったりしましたよ。まあ、彼らはテレビ(2作の映画公開の間に放映された連続ドラマ「まほろ駅前番外地」)撮影分だけ僕より長くまほろに漬かっていて、まほろに関しては2人のほうがベテランですからね。

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三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』特設サイト

瑛太・松田龍平主演で間もなく映画化!
まほろ駅前で起きる、混沌と狂乱の大騒ぎ!

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三浦しをん・著

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