- 2014.10.24
- インタビュー・対談
映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念
三浦しをん×大森立嗣
緊張感と、心地よさ
「本の話」編集部
『まほろ駅前狂騒曲』 (三浦しをん 著)
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
現場で取り戻した親子愛
三浦 それから、麿赤兒さん(大森監督の実父。多田便利軒にバスの運行監視を依頼する岡役で出演)率いる老人軍団はすごかった。
大森 もう野獣ですよ、全員。
三浦 間引き運行に抗議するためにバスジャックした車内で、乗り合わせた行天の身に大変なことが起きているのに、彼らは状況がよくわかっていない感じもすごくよくて。
大森 本当に笑っちゃいますよね。
三浦 最初シナリオを拝読したとき、多田と行天が岡さん宅を訪問するシーンに「上がり框に立った風呂上がりでふんどし姿の岡」って書いてあって、「なぜ?」とポカーンとしたんですよ。監督は「絶対大丈夫ですよ」っておっしゃったんですが、湯上がりにふんどし姿で偉そうにしている老人っているのかなと。ところがスクリーンに岡さんがふんどし一丁で登場した瞬間、「ほんとにいた!」って(笑)。わざとらしさがまったくなくて、「あ、岡さんはこういう人なんだ」という説得力がすごくあって、本当におかしかったです。でもお父様とだとやりにくさはないですか?
大森 もうなくなっちゃったかな。むしろやりやすくなってますね。今回、親父も相当気合が入っていて、クランクインのずっと前に「俺、バスジャックしてえな」とか言ってましたから(笑)。
三浦 自分以外の役者にその役がいかないようにアピールされてる(笑)。
大森 親父に「プロデューサーに何か言ったんですよね」って言ったら、「うわっ、言ってたかぁ」なんて言って。
三浦 麿さんにそこまで出演を熱望していただけて嬉しいです。見事なバスジャックぶりでしたものね。
大森 もう気合が入っているので、撮影中もバスジャックのシーンで使う包丁を本身と偽物の両方用意してるんですよ。本身の包丁も一応刃は落としてあるんですが。
三浦 へえ!
大森 人物に寄った撮影時はやっぱり偽物だとバレてしまうので本身を使うんですが、引いたシーンでも「ここは本身のほうがいいんじゃないのか」って、そればっかりずっと言ってる。
三浦 常に本身を要求なさる(笑)。
大森 「ここは引きの撮影だから偽物で大丈夫だよ」と言っても、「うーん、これでいいのかなぁ」とか言ってね。
三浦 面白い、面白すぎる(笑)。本当に岡さん役は麿さん以外は考えられないですよ。
大森 僕は親父と一緒に住んだことがほとんどなかったんですが、今回初めて愛情を感じましたね(笑)。真冬の寒い中、待ち時間が長い撮影現場で、老人軍団の中心になってくだらない話をずっとしてるんですよ。
三浦 場を温めてくださっている。
大森 そうなんです。「待ち時間が長くて大丈夫かな」と老人軍団のほうを見ると、親父がにぎやかに老人会をやってくれている。「助かったぁ」と思いましたね。
三浦 頼もしい!
大森 ちょうど撮影と親父の舞台稽古の時期が重なっていたのに、大雪で撮影が延びていて。プロデューサーが「麿さん、舞台のほうは大丈夫ですか」って聞いたら、「大丈夫だよ、息子の映画って言えば全部オッケーだから」って、稽古を休んで撮影に来てくれるんです。もう愛を感じちゃって(笑)。
三浦 すごいじゃないですか。親子愛に今、胸を打たれました。
大森 そうそう。だから、この映画で愛を取り戻す話を撮っていながら、自分も愛を取り戻しているんじゃないかという気分にさせられました。
三浦 いやー、そうでしたか。みんなハッピーに着地してよかったです(笑)。
“まほろ”シリーズとは……
東京郊外、まほろ市の駅前で便利屋「多田便利軒」を営む多田の元に、かつての同級生・行天が居候することから始まる物語。責任感が強く不器用な多田と、マイペースでつかみどころのない行天。正反対の性格にみえる2人が、個性的な人々が持ち込むトラブル解決のために奮闘する日々を描く。原作の累計売上は120万部を記録したベストセラーシリーズ。
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