インタビューほか

映画「まほろ駅前狂騒曲」公開記念
三浦しをん×大森立嗣
緊張感と、心地よさ

「本の話」編集部

『まほろ駅前狂騒曲』 (三浦しをん 著)

大人気“まほろ”シリーズの映画2作目がついに公開。原作者と監督が語る“まほろ”独特の空気感の秘密、そして2作目ならではの変化とは――。

咀嚼した言葉は音に出る

三浦 そのいい意味での緊張感が作品にピンと張った糸みたいに張りつめて、観客の心を逸らさない魅力になっていると思いますよ。監督は役者さんの演技に細かい指示をされないそうですね。

大森 僕が口に出すとその言葉の意味に縛られてしまうんです。役者がその場で演じてくれることを大事にしたいという思いが強くて、それが自分のイメージと違っていても全然構わない。前後のシーンはこうだから、このシーンはこう、という作り方はすごく嫌いなんですよ。

三浦 そうすると、編集の段階で「あら、つながらない」ということにはならないんですか?

大森 ならないですね。1人の人間が演じていて気持ちが繋がっているので大丈夫なんです。

三浦 それはそうですね。終盤、奈良岡朋子さん演じる曽根田のばあちゃん(依頼を受け多田便利軒は高齢で入院中の彼女を息子の代わりに見舞っている)が多田に「あの世ってあるんだろかねえ」と聞く一連のシーンも、一歩間違えると説教くさくなりそうなのに本当に真に迫って感じられました。曽根田のばあちゃんがこれまでどう生きてきたか、何を感じてきたのかも伝わって、もう台詞じゃない、生の言葉になっていました。それから、全体を通じて瑛太さんの台詞の音の高低がすごくよかった。多田がどれだけ優しい人かが語尾のちょっとした音程で伝わってきて、私は感極まって涙ぐんでしまったんですけど。今のお話を伺って、それも役者さんが自分の体や知性や経験のすべてを通じて咀嚼したから、ああいう音になるんだと思いました。

大森 そうなんですよね。だから他の役者さんだったら、きっとそういう言い回しにはならないんです。

三浦 どなたが演じてもその役者さんなりの多田になるのでしょうけど、宇宙で一番、多田を理解していらっしゃるのは瑛太さんですね。それはもう、原作者以上に。私が小説を書くときも、書いているうちに自分が想定していたのと全然違う方向へ進むことがあるんです。でもそういう瞬間が訪れると、話がうまく運んで「あ、そうだ、こういうことが書きたかったのかも」という方向へ進んだりするんですよ。最初からガチガチに構成などを決めてしまうと、登場人物が操り人形っぽくなって面白くない。演出もそれと同じかもしれないですね。

2人だからうまくいく

大森 今作の軽快さというのは、ちょっと意識した部分ではあるんです。まあ、ある程度ヒットさせたいというのも理由にあったんですが(笑)、でも何をしたらヒットするのかというのはわからないことで、いちばん難しい。そのよくわからないことに邁進することはなかなかできなくて、常に葛藤があります。

三浦 本当にそうですよね。でも軽快さの中にも大森監督の持ち味があって、上っ面な軽快さではまったくないんですよ。さびしい部分など鋭く切り取られて、監督の映画を観るたびに「あー、大好きだ!」と思うところです。

大森 それは原作がもっているものが本当に大きいので。

三浦 違う、違う(笑)。

大森 僕、基本的には原作に乗ってやっていますから。「これが最後の春になるかもしれないなあ……」という曽根田のばあちゃんに、「俺はあんたのこと、なるべく忘れないようにする。俺が死ぬまで。それじゃだめ?」という言葉を返せる行天と多田は、人間として根本的な何かをちゃんと持っている。それを小説から感じるので、映画で描けるんですよ。

三浦 ありがとうございます。

大森 お金はないけど根源的な愛みたいなものを知りたいと思っている寅さん的な人がこの時代にいる、というのがちょっと想像できないところがあったんです。でも、「ここにいた」と実感できたのが僕にとっての多田と行天ですね。寅さんは今の時代そのままでは存在するのが難しいけれど、この2人が一緒にいることで、その役割を担っている感じがする。普遍的に愛されるキャラクターになっているんじゃないでしょうか。

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三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』特設サイト

瑛太・松田龍平主演で間もなく映画化!
まほろ駅前で起きる、混沌と狂乱の大騒ぎ!

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三浦しをん・著

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三浦しをん・著

定価:本体560円+税 発売日:2009年01月09日

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