インタビューほか

〈対談〉『ぐるすべ』も実はパラレルなんです

「本の話」編集部

『ぐるぐるまわるすべり台』 (中村航 著)
『パラレル』 (長嶋有 著)

長嶋 僕の中ではこの小説の中でいくつか手ごたえがあった箇所があって、ここはそのうちのひとつかもしれない。

中村 それと、この小説は時系列では進行してません。時間を区切りながら、順序がどんどん入れ替わっていくという仕掛けがうまくいっている。

長嶋 僕の中でイメージしていたのは、タランティーノ監督の映画みたいな感じです。「5 years ago」と黒地に白抜きで出たら、回想っぽいムードなく、いきなり現在進行形で五年前の劇が始まる。それで、また暗転すると、今度は現在のファミレスで殺し屋がいる場面に戻る。その仕掛けが黒地に白で「5 years ago」というだけで済んでしまう。そんな風に、あの頃はこうだったというようにはなるべく言わずに書きたかった。

中村 でもそれは映像だから可能だという部分もあると思います。小説の中でこれを成功させるのは難しいでしょう。

長嶋 確かに書いている最中は何箇所かわざとらしい回想シーンになっていたんです。「ポワワワーン」と音が出てきそうな。そこを編集者と相談して「ポワワワーン」は止めて、ここはビビッドに切りましょうということになった。

 今でも覚えていますよ、「ポワワワーン」という言葉を(笑)。

中村 単行本では特にラストシーンが「文學界」掲載時から大きく変わっていますね。個人的には、それは成功していると思います。峰不二子はルパンと結婚してはいかんだろう、と思いますし(笑)。

 それと、本文中では長嶋節(ぶし)というか、心に残る言葉やセリフのオンパレードです。たくさんあるんだけど、あえて一つ挙げるとしたら「敵か味方か峰不二子」かな。友達のあだ名が「ズゴック」だったというのもいい。

長嶋 ズゴックなんかは世代的に三十代の人には響くと思うけど、それ以下の世代にはわからないかもね。でも、たとえその言葉を知らなくても伝わる面白味みたいなものはあると思うんです。

 峰不二子のことも万が一わからない読者がいたとしても、語呂や語感として邪魔にはならないだろうと。

中村 それと、離婚届を出すときに「違いますからね。ボクも泣きましたから」と心の中でとりつくろうシーンは印象に残る名場面です。僕は大好きですね。

 この小説の「僕」は、こういう場面ではこういうものの考え方、受け止め方をするだろうな、というのがすごくよくわかる。肯定的なシーンとして、これを書ける人はいないと思う。

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ぐるぐるまわるすべり台
中村航・著

定価:本体500円+税 発売日:2006年05月10日

詳しい内容はこちら

パラレル
長嶋有・著

定価:本体505円+税 発売日:2007年06月08日

詳しい内容はこちら



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