そして3年の月日が流れました。(済みません、このままですと、いつになっても「自著を語る」になりませんので、ちょっと先を急ぎます)
『天に還る舟』を上梓したあと、ひたすら小説を書きました。ここで立ち止まってしまえば、島田先生の折角のご指導を無にしてしまう。その思いが強くあり、また小説を書くことの楽しさに、目覚めてもいたのです。
やがて原書房さんから『十三回忌』という本を出すことができました。私の単独デビュー作であり、大好きなミステリーへの想いを込めて、あらゆるトリックをちりばめました。
拙著を手にとってくださる方のために、ひとつでも多くトリックを入れたい。トリックを限界以上に盛り込み、その上で、破綻なく物語を構築する力をつけたい。
そう考えて、2作目以降も隙間なくトリックを入れました。そして気がつけば、「やりすぎミステリー」と呼ばれていたのです(笑)。
でもその頃から、そろそろ別の作風で自分の枠を広げてみたいと、考えるようになりました。
トリックの見せ方にこだわり抜く。読了後、すぐに会いたくなるような、魅力的な人物を登場させる。そしてどんでん返し。
それらを主題に「端正な推理小説」を目ざして書いたのが、『永遠の殺人者 おんぶ探偵・城沢薫の手日記』です。
都内で見つかった男性の死体には、両手がなかった。切断された男性の右手と左手は、それぞれ別の場所で発見される。だが現場の状況や聞き込みの結果を考えれば、男性が殺されて手首を切断される前日、両手首はすでに大阪市内にあったとしか思えない。
無言でアリバイを主張する両手首。その謎が解けずに捜査は難渋し、上層部はついに切り札を用意する。それはなんとお婆ちゃん。しかも大きな体躯の孫に、おぶさっている。
かつて警視庁の捜査一課には“昭和の名刑事”と謳われた男がいた。お婆ちゃんはその刑事の妻であり、知恵袋でもあったという。
おんぶ探偵の登場に、とまどう刑事たち。孫の背に乗ったまま、捜査を開始するお婆ちゃん。そこへ第2の事件が起きて――。
1998年の早春に、私のすべてが始まり、2005年の夏を経て、今は2013年です。15年間の、私のすべてが詰まった作品になりました。
この作品を書きあげた今、ささやかな矜持とともに、申しあげます。
真犯人が解った瞬間、あなたの世界は反転する!
読まないと、損しますぜ。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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