インタビューほか

リアルな「裁判員制度」ミステリー

「本の話」編集部

『てのひらのメモ』 (夏樹静子 著)

最高裁の諮問委員に

夏樹  裁判員制度についてはこれまでもいろいろ書かれています。マンガも出ていますね。それらに補充裁判員はほとんど出てきません。無視されがちなので、読者の意表をつく意味でも、このような立場にしました。裁判員が何かの理由で出席できなくなったときの代役ですが、裁判によって一人のときや数人のときがあるようです。しかし、抽選で補充裁判員になった人はかえって大変ですよ。結局座っているだけで終わってしまうかもしれないので、モチベーションが上がりませんね。一方で、一番難しい量刑の評議でも聞いているだけでいいわけですから、気楽といえばその通りですが。

──逆に冷静に法廷全体を見渡せるという視点では、裁判員制度を知るという意味でいい立場ですし、小説では福実にも「サプライズ」が訪れ、立場が変わります。その他に、ご苦労された点はございますか。

夏樹  有罪無罪と量刑を決める評議の場面ですね。そのために裁判員それぞれのキャラクターをどうするかは悩みました。もともと事件の状況も、裁判員の顔ぶれも、議論が生じるようなものでないといけない。それに評議の中のせりふ、そのものも難しかったですね。それぞれの社会経験を反映させた発言が必要ですし、個性も出したい。

──公訴事実、どういう罪で起訴されたかも絶妙です。こちらもご苦労されたのではないでしょうか。

夏樹  私が最初考えた状況で十分起訴されると考えていたんですが、弁護士の方に聞いたら、そんなことでは起訴できないというんです。それで渋滞で家に帰るのが一層遅れたことにしようと思ったら、渋滞はこの人のせいではない、と。近年は被害者側の声が強くなり、変わってきましたが、民事不介入の歴史もあって、よほどのことでないと「保護責任者遺棄致死罪」では起訴できないそうです。この点は本当に苦労しましたが、小説を読んでくださった司法関係者の方々は、起訴についてみな納得して下さっているので、ほっとしてます。

てのひらのメモ
夏樹 静子・著

定価:1600円(税込)

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