──やはり一人ひとりの責任が重いと感じますね。
夏樹 よくそのように強調されますが、私は裁判員の方はそんなに肩に力をいれずに自然体で臨めばいいと思います。もちろん法律の勉強なんかしていく必要はないです。法廷にいる時間一所懸命聞いて、そして本当に自分が感じたままの意見を言えばいいんじゃないかと思います。それ以上背伸びしてもしょうがないわけですから。
──小説に出てくる仲里裁判長が、法廷での衝撃的な応酬で顔に興奮が浮かび出ていたというくだりがあります。場慣れしているとはいえ、裁判官も一般人と同じですね。
夏樹 それはそうです。私が取材した裁判官で、死刑判決を出したあと、三日間高熱を出して寝込んだという方がいました。まあ、裁判官でも死刑判決を出すのは一生に何度もないですから。
戦前の陪審制度と較べると
──本書には、日本の裁判の歴史についても触れられています。驚いたのは戦前に日本で陪審制度があったということですね。
夏樹 陪審員ですから量刑は判断しないですが。
──当時の拘束はすごかったと書かれています。情報を遮断するために陪審員全員を寝泊りさせて、当然外部との連絡は一切ダメ。それと比較してはなんですが、裁判員はわりとゆるいことに驚きました。てっきり、法廷の中のことは一切口外してはいけない、と思っていましたが……。
夏樹 そんなことはないんですよ。裁判そのものは公開されていますから。法廷で語られたことは話してかまわないんです。ただ、いけないのは、特に評議で、こういう人がこう言った、あの人がこんな発言をしたために重罪になったなど評議の内容を口外することです。だけども、家族にも何も言わないということはありえないだろう、ということは裁判所もわかってますよ。裁判員の奥さんが帰ってきて、夫がどうだったと聞いて、守秘義務だから話さないというのは難しいでしょう。家庭がおかしくなってしまいますよ。
──お昼ご飯で外に出ていいんですね。
夏樹 私も驚きました。近くだったら勤めている会社に顔を出して戻ってきてもいいし、レストランに行ってもいいんです。お弁当を支給するかわりに外出禁止かと思っていたんですが、お昼は自前なんですね。コーヒーくらいは出してくれるそうなんですが、裁判所によっては出さないところもあるかもしれないというので、小説ではそれは書いていません。
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