- 2015.05.15
- インタビュー・対談
映像化不可能小説を映画にするアイディアが僕にはあった
掲載:CINEMA SQUARE
『イニシエーション・ラブ』(乾くるみ 著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
映像化不可能といわれた『イニシエーション・ラブ』の映画公開を来週に控え、雑誌「CINEMA SQUARE」に掲載された、著者・乾くるみさんのインタビューを公開します。
──『イニシエーション・ラブ』を映画にしたいという話がきた時、どのように思われましたか?
乾 映画の制作発表の時に出したコメントは「映像化は無理でしょう」という突き放したものだったんですが、そう言っておいて、試写会を観てから「いや参りました」と前言撤回する流れを作りたかったんですよ。プロレス的なノリで(笑)。実際は、映画化の話が来た時に、映像化するならそれ用のアイディアがあるので、それを使って欲しいと申し上げていて、そのアイディアをもとにした脚本も読ませていただき、いいものになるという確信はありました。
――映画用のアイディアも乾さんが提案されたのですか。
乾 この小説は10年前に発表したもので、その当時から、映像化は無理だろうと言われていて、でも僕には、こうしたら可能だという原案のようなものがあったんです。それはやったもの勝ちなので、早くやらないと誰かに先を超されてしまうかもしれないと心配していました。
――どんなアイデアを出されたかは、映画を観てのお楽しみですね。
乾 原作の小説ではある種のトリックを使っていますが、映画化するなら、映画のお約束を逆手に取ったトリックに置き換えるのが筋ですよね。あんまり言うとネタバレになっちゃうかな(笑)。
――そもそも、この小説を思い付いたいきさつは?
乾 宮部みゆきさんの小説「誰か Somebody」に、主人公の男性が妻と出会ったキッカケを振り返る回想シーンがあって、それがすごく好感を持たれるようなエピソードだったんです。読みながら、ベストセラー作家の書くものを見習わなきゃと思いながらも、僕が書くと、結局付き合っても大体別れるものだという話になってしまうだろうなあなんて考えていたところ、書き方を工夫すれば、最後の最後でびっくりするような話にできるかもと思い付いたんです。この作品が最初に本になったのは、原書房という出版社の本格ミステリー専門のレーベルだったので、ミステリーのはずなのに、読んでも読んでも恋愛の話ばかりで、一向に事件が起きないなぁと読んでいくうちに、最後に、ええっ!? と驚く話というのをあえて書いてみたという訳です。
――'80年代を舞台にして、当時のヒット曲を章タイトルにした訳は?
乾 最初は、タロットカードの恋人のカードをモチーフにしようと思って、恋人は22枚あるタロットカードの6番目なので、6か月の話にして、1か月ごとに1曲タイトルを付けようと考えました。’80年代を舞台にしたのは、僕がそのころ大学生だったからで、当時流行った曲は、やっぱり胸にキュンとくるんですよ(笑)。そういう曲にインスパイアされて物語を書きました。
――A面、B面の2部構成にした訳は。
乾 最初、タイトルを仮に「恋人たちの季節」にしていたのですが、色々話を練っているうちに、A面、B面の2部構成にするアイディアが浮かんで、その時に「恋人たちのアルバム」に変えたんです。結局、タイトルはまた変わってしまったけれど、アルバムみたいに6曲ずつの構成は残りました。