──太田和彦さんの新刊『愉楽の銀座酒場』ですが、バーから居酒屋までを取り上げた、銀座の酒場のガイドブックとして、これまでにない豪華な内容ですね。
太田 銀座のタウン誌「銀座百点」に三年間連載したものをまとめました。編集部の依頼は、バーから居酒屋まで、気軽に行けるところは全部扱おうということで取材を開始したのですけれど。
僕は居酒屋の本はよく書いていたのですが、バーを書きたい気持ちもありまして、結果的にバー七割、居酒屋三割になりました。これは、銀座の街の実感だろうと思います。
──酒場を切り口に銀座というエリアを紹介する際に、気をつけられた点はありますか。
太田 銀座を扱った本は、たくさん出ています。バーの本もあれば、居酒屋の本もありますが、そこで働いている人たちのパーソナリティが描かれている本はあまりないかなあ、という気がして、こだわりたいと思いました。
バーはどこの店も基本的に同じなんですね。カウンターがあって、バーテンダーがいて、作るものも同じ。技術の差はもちろんありますが。そしてバーは基本的に食べものがない。食べものを書かない店記事は難しいんです。「よい酒がある」だけでは店の雰囲気が伝わりません。店の様子を伝えるのは、中にいる人とのコミュニケーションなんです。バーの楽しみはバーテンダーに会いに行くことですから、少し飲んで互いにリラックスした感じを大事にしようと。言ってみれば臨場感を出す。そうすることでバーの個性を書けるかもしれないと次第に気がついてきました。
──基本的にバーテンダーは聞き上手だとは思いますが、無口に近い人も多いかと。 本書では、太田さんが彼らからバーの歴史や裏話など多彩な話を引き出されています。引き出すコツというものはありますか。
太田 僕はバーテンダーと話すことをこころがけているんですよ。話すきっかけをこちらから持っていこうと。
取材では、店に入る前に襟(えり)を正し、気持ちを集中しました。問題は、飲みすぎると酔っ払いますから、気をつけないといけない(笑)。酔いながらも、その店を表すエピソードに誘導してゆく(笑)のはなかなかスリリングで、取材が終わると担当者と二人で別のバーに入り、何も考えずにバカ飲みしました。ですからひと晩に二~三軒行ってます(笑)。
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