インタビューほか

変わらない銀座と進化する酒の味

「本の話」編集部

『愉楽の銀座酒場』 (太田和彦 著)

──最近は飲みに行く女性も多いと思います。ただ、銀座のバーに一人では無理、という人がまだ多いのではないでしょうか?

太田  いえ、女性は多いですよ。女性は一流バーにいます。一流のバーは女性の一人客に偏見がないですから。普通に「どうぞ」と、大人の扱いをして、「女性だから」という接し方はしない。しないけれども、レディとしての扱いを見えないところで上手にやる。

  接客のプロは、きちんとした人にはきちんと接します。銀座はホテルバーの出身者も多く、女性には安心できるところです。

──銀座に象徴される、日本のバーテンダーの技術が世界で評価されていますが、その理由はどこにあると思われますか。

太田  銀座のみならず、日本のカクテル・バーテンダーの技術は高いと多くの人が言いますね。

  僕は世界のレベルはあまり知りませんが、日本のバーテンダーは仕事への打ち込み方が全然違うらしいですね。日本人の仕事は丁寧で繊細で、美学を持ち、求道的だと。そのうえ客のほうも求道的なんですよ(笑)。茶道の精神ですね。お茶席で一番大事なのはしゃべらないこと。お点前(てまえ)に入ったら沈黙する。バーも同じ。バーテンダーが作りだしたら黙る。その一~二分間くらいが、バーの醍醐味(だいごみ)ですね。

──バーテンダーと客というのは、本当に「特別な関係」なんですね。

太田  僕は初めてのバーでも、空いていればバーテンダーの前に座り、よけいなことは言わず、まず飲み物を注文します。「分かりました」とバーテンダー。客の見ている前でいつものことがいつもどおりにできる。この胆力がバーテンダーには大事ですね。

  逆にバーテンダーに緊張してもらうのがおいしいカクテルを飲むコツ。そして飲んだあとに感想を言う。「けっこうなお点前です」のような。

  型どおりでもバーテンダーは安心して、心を開き始める。バーはそういうところが面白い。ですから一人でも楽しいですね。

──まさに酒場は日本の文化というわけですね。今後の銀座はどのようになると思いますか。

太田  銀座は変化が激しく見えますが、底に変わらないものがしっかりあります。それが偉いですね。

  表通りの小さな店や商店会がしっかり残っている。「外資系のビルばっかりできて、どうなんでしょう」と聞くと、「成績が悪ければ撤退するでしょう、外資系はドライですから」と冷静に見ています。残っても撤退しても何も慌てません。銀座はそういう街なんだから、という構えを守ろうとしています。ですから、銀座は変わらないと思いますね。

  銀座が変わらないということは、僕も変わらなくてよいということ。体と相談しながら、死ぬまで銀座で酒を飲んでいきたいと思います(笑)。

愉楽の銀座酒場
太田 和彦・著

定価:1700円(税込)

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